2002年に読んだ本

打海文三「ハルビンカフェ」 松樹剛史「ジョッキー」 田口ランディ「モザイク」 平安寿子「素晴らしい一日」「グッドラックららばい」 室積光「都立水商」 富樫倫太郎「陰陽寮 晴明復活篇」 吉田修一「パークライフ」 宮本輝「焚火の終わり」 小野不由美「十二国記 華胥の幽夢」 東野圭吾「探偵ガリレオ」 佐々木譲「武揚伝」 真保裕一「黄金の島」 船戸与一「緋色の時代」 北方謙三「擬態」 黒岩重吾「中大兄皇子伝」 唯川恵「肩ごしの恋人」 村上春樹「海辺のカフカ」 川上健一「ららのいた夏」 浅田次郎「プリズンホテル1夏」 荻原浩「母恋旅烏」 白石一文「僕のなかの壊れていない部分」 池永陽「コンビニ・ララバイ」 奥田英朗「最悪」「邪魔」 高野文子「黄色い本」

ジョー・R・ランズデール「ボトムズ」 ホーマー・ヒッカム・Jr「ロケットボーイズ2」 R・ドレイパー「ハドリアヌスの長城」 B・フラナガン「A&R」 イアン・バンクス「エスペディア・ストリート」 エリック・ガルシア「さらば、愛しき鉤爪」 ジェームズ・リー・バーク「ハートウッド」 S・J・ローザン「どこよりも冷たいところ」

アン・モロー・リンドバーグ「翼よ、北に」 ストーム・トーガスン、オーブリー・パウエル「100ベスト・アルバム・カヴァーズ」 北上次郎「ベストミステリー大全」 南伸坊「装丁」 土屋守「モルトウイスキー大全」 近田春夫「考えるヒット」 細田正和「ニッポンの現場検証」 山口文憲「日本バチカン巡り」 副島輝人「日本フリージャズ史」 

 まりこさんも読んだ恐竜ハードボイルド!

 浜田真理子さんは今年僕が出会った最高のシンガー&ソングライターですが、彼女のBBSに「『さらば、愛しき鉤爪』っていう面白い恐竜ハードボイルドがありますよ」と書き込みをしたら、チャンドラー好きの真理子さんはさっそく取り寄せて読んでくれたそうです。いやあ嬉しいな。「さらば、愛しき鉤爪」は正統派ハードボイルドです。主人公の探偵は軽口ばかりたたいているし、頼りになる相棒や魅力的な女性そして悪役だって魅力的で登場人物キャラ立ちは見事です。ハードボイルド探偵小説の王道を行くと思いきや、この主人公はじつは恐竜なんです。って話しで、いったいどう収まっているのかは読んでみないとね。
 奥田英朗「最悪」「邪魔」も面白かった。物語は何処にでもいるような人のありふれた日常からスタートする。どこにも事件も殺人もない。ありふれた日常が事件に向かって進んで行く。事件が起きると後はジェットコースターのように物語りが進み、読者は物語に乗ってどんどん運ばれて行く。加速する快感。こんな感じ。凄い才能です。
 「武揚伝」は幕臣榎本武揚の物語で、明治維新モノも榎本のような優れた近代化へのビジョンを持ちながらも幕臣として筋を通した男を描くとなかなか新鮮でした。勝海舟をボロクソに描いています。明治維新が維新と言う名の王政復古だったのも真実で、「君が代」を国歌と戴く平成ニッポン、ホントはカクレ王朝国家だったりして。
 「翼よ、北に」は有名な飛行家リンドバーグの妻アンによって書かれた紀行文で、今年一番の目ウロコ本でした。戦前の日本人は日本文化はかくも美しかったのか!と心洗われます。特に言葉「サヨナラ」について書かれた文章に。
 【「サヨナラ」を文字通りに訳すと、「そうならなければならないなら」という意味だという。(中略)けれども「サヨナラ」は言いすぎもしなければ、言い足りなくもない。それは事実をあるがままに受け入れている。人生の理解のすべてがその四音のうちにこもっている。ひそかにくすぶっているものも含めて、すべての感情がそのうちに埋み火のようにこもっているが、それ自体は何も語らない。言葉にしないGood-byであり、心をこめて手を握る暖かさなのだ〜〜「サヨナラ」は。】
 「日本フリージャズ史」は熱い思い入れに読んでるこっちまで熱くなった。フリージャズは僕のジャズの出発点なので、とても懐かしく興味深かく読みました。
 「黄色い本」はマンガです。相変わらず素晴らしい。高野文子は忘れた頃にやって来る。しか〜しマンガ読まなくなったな。
 「ハルビンカフェ」打海文三がこんなノワールを書くとは!日本海側近未来都市を舞台とした強烈な作品。警察、謀略、スパイそしてロマンスなどミステリーに付き物のあらゆる要素を巧に練り上げた力業が凄い。
 「ハドリアヌスの長城」はアメリカ南部の刑務所を基幹産業?とした町のお話。ある囚人を主人公にたんたんとした語り口で綴るミステリー仕立ての感動物語。読後感の良さで印象に残りました。

 じゃあこのへんで本年度ベスト3の発表! ♪〜パンパカパ〜ン

 1、「ハドリアヌスの長城」R・ドレイパー
 2、「翼よ、北に」アン・モロー・リンドバーグ
 3、「さらば、愛しき鉤爪」エリック・ガルシア
   「ハルビンカフェ」打海文三

 はい、こんなところでしたね。ところで僕は本を近くの本屋さんから買っています。たいていは注文なんですが、WEBで注文した方が早いのはわかっていますが、そんなに急いで読みたいわけじゃないし、未読の本も慢性的に溜まっているので少々遅くなってもいいので地元の本屋さんに注文しています。ただ困ったことに注文しても「品切れ」がけっこう出るんですね。その理由はともかく重松清「流星ワゴン」、奥田英朗「イン・ザ・プール」、川上弘美「龍宮」、山本文緒「ファースト・プライオリティ」、デニス・レヘイン「雨に祈りを」など届かずじまいの本でした。
 それでは2003年も面白目ウロコ本に出会えますように。