2003年に読んだ本

佐藤多佳子「黄色い目の魚」 船戸与一「夢は荒れ地を」 福井晴敏「終戦のローレライ」 宮部みゆき「ブレイヴ・ストーリー」「誰か」 奥田英朗「イン・ザ・プール」   真保裕一「誘拐の果実」 高橋克彦「火怨」 川上健一「跳べ、ジョー!B.Bの魂が見てるぞ」 小川洋子「博士の愛した数式」 横山秀夫「半落ち」「深追い」 逢坂剛「のすりの巣」 板東眞砂子「夢の封印」 川上弘美「龍宮」 山本文緒「ファースト・プライオリティ」 乙一「ZOO」 穂村弘「世界音痴」 湯川れい子「熱狂の仕掛人」 鈴木淳史「不思議な国のクラシック」 田口俊樹「おやじの細腕まくり」 佐藤雅彦「毎月新聞」 関川夏央「昭和が明るかった頃」 岡崎京子「うたかたの日々」「ヘルタースケルター」 近藤ようこ「アカシアの道」

J.D.サリンジャー(村上春樹訳)「キャッチャー・イン・ザ・ライ」 リック・リオーダン「ビッグ・レッド・テキーラ」 ロバート・クレイス「破壊天使」 ダニエル・クライン「キル・ミー・テンダー」 チャールズ・ブコウスキー「町でいちばんの美女」 ヴィクター・ギシュラー「拳銃猿」 エリック・ガルシア「鉤爪プレイバック」 デニス・レヘイン「雨に祈りを」ジェフリー・ディーヴァー「青い虚空」 ドナルド・E・ウエストレイク「骨まで盗んで」 リン・スクーラー「ブルーベア」 ファン・ゴンザレス「フォール・アウト」  

 恋する物語に知能犯小説に岡崎京子

 岡崎京子を知るのが遅すぎたな。名前は知っていたがなかなか手が出なかった。女性漫画家には注目しているほうなんだけどね。岡崎さんは「ヘルタースケルター」の連載が終わった'96年に飲酒運転の車にはねられて現在もリハビリ中だという。元気な姿をファンの人達の前に作品と共に現してくれる日を切に願っています。彼女の描く小悪魔的なコケティッシュな女性はこわいけど魅力的です。愛しているけど心をひとつにできないことで孤独を感じる恋人達の物語。これって今風なのかな。岡崎京子の「うたかたの日々」「ヘルタースケルター」は読んでいてビビるほど素敵な作品でした。
 気になったのは大好きな作家
船戸与一の「夢は荒れ地を」。彼はバイオレンスの場面を書いてもそれが自然の摂理かのように表現できる希な才能の作家だと思っている。ところがこの作品の暴力や死はじつに悲しいのだ。船戸与一も暴力に疲れてきたのか。
 じつはアメリカのハードボイルド&ミステリーに以前ほど愛着を感じなくなった。気にくわない奴は殴り倒せ、拳銃をぶっ放せって感じに飽きたのかもしれない。ブッシュにウンザリしてるせいもあるかもな。
 
福井晴敏はよりグレードアップしたようだ。潜水艦冒険小説が好きなもんで「終戦のローレライ」には大満足。活劇小説としての面白さだけでなく、国家とは国民の幸せとはなど、いろいろと考えさせられた。ちかごろ日本の政治家は国策だとか国益だとか言い過ぎてないか?そのうち国民より国家優先となりそうな気配がするな。
 
奥田英朗「イン・ザ・プール」は短編集です。やたら面白い話しばかり。ぐいぐいと読者を引きずり込んで一気に読ませてしまうその才能に拍手喝采です。
 読後感の良かった作品は
佐藤多佳子「黄色い目の魚」小川洋子「博士の愛した数式」ですね。「黄色い目の魚」は思春期恋愛小説としても成長小説としても秀逸です。振り返ると青春って恥ずかしい思い出だらけで、それはまだ人間としてスレていない(要領が悪い)ってことだったようにも思えるわけで、だから40代中頃の今こうした物語に接すると、オジサンはその瑞々しさに羨望を憶えながらも嬉し楽しく読めるのですよ。
 「博士の愛した数式」はきれいなメルヘンのようなお話です。老数学者と20代後半シングルマザーとその息子との不思議な関係を穏やかなタッチで描いています。絵になる、絵にしたい物語です。数学嫌いなはずの僕がちょっとだけ数学好きになれましたよ。よくもこんなお話を考えつきましたね小川洋子さん。感動しましたよ。
 今年のリストであれっ?だったのは時代小説がたったの1冊だったことです。
高橋克彦が東国の英雄アテルイを描いた骨太小説「火怨」だけ。いかんなこれじゃあ。読みたい本がたくさんあったんだけどな。
 翻訳物で印象に残ったのは
ロバート・クレイス「破壊天使」ジェフリー・ディーヴァー「青い虚空」。「破壊天使」は爆弾犯vs爆弾処理班、「青い虚空」はハッカーvsハッカーの対決。知能犯相手の知力を尽くし心理を探りあう様がスリリングな作品でした。リン・スクーラーの「ブルーベア」はアラスカのガイドである著者が写真家星野道夫との交流を綴った、朴訥な男気を感じさせる本だった。動物写真家として有名な星野道夫さんのスケールの大きさに、ちょっとだけだが触れた気がした。
 
エリック・ガルシア「鉤爪プレイバック」は去年の面白本「さらば、愛しき鉤爪」のシリーズ。恐竜ハードボイルドです。恐竜って?なにい?の方は是非ご一読を。

 それでは本年度ベスト3は(といってもたった38冊の中からですが)

   1. 「博士の愛した数式」小川洋子
   2. 「終戦のローレライ」福井晴敏
   3. 「黄色い目の魚」佐藤多佳子
     「破壊天使」ロバート・クレイス

 毎年読書量が落ちていきます。30代の頃は年間100冊が目標でしたが、40代のなってからは50冊がせいぜいですね。結婚して子供ができて、両親は老いるし、そのぶん仕事は増えるしで、なかなか読書の時間がとれないんだよね。まあこんなもんだから、これで良しとせねばね。目は疲れやすいし肩こりだし、はっはっは愚痴ばっか。
 

2002年に読んだ本