2004年に読んだ66冊〜の本たち

姫野カオルコ「ツ、イ、ラ、ク」、伊坂幸太郎「重力ピエロ」、舞城王太郎「阿修羅ガール」、奥田英朗「空中ブランコ」「東京物語」、村上春樹「アフターダーク」、恩田陸「夜のピクニック」、森絵都「永遠の出口」、宮部みゆき「天狗風」「本所深川ふしぎ草紙」、宮部みゆき+黒鉄ヒロシ「ぱんぷくりん」、古川日出男「サウンドトラック」、東野圭吾「幻夜」、平岩弓枝「初春の客〜御宿かわせみ傑作選」「魚の棲む城」、花村萬月「私の庭〜浅草篇」、田辺聖子「ゆめはるか吉屋信子 上下」「ジョゼと虎と魚たち」、池波正太郎「剣客商売」「辻斬り」「剣客商売読本」「鬼平犯科帳」、逢坂剛「デスデモーナの不貞」、藤田宣永「艶めき」、赤坂真理「ヴァイブレータ」、吉本ばなな「不倫と南米」、江國香織「薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木」、司馬遼太郎「燃えよ剣 上下」、北原亞以子「深川澪通り木戸番小屋」、坂口安吾「不連続殺人事件」「白痴・二流の人」、安部龍太郎「信長燃ゆ 上下」、乙一「ZOO」、川上弘美「おめでとう」、鷺沢萠「ウェルカム・ホーム!」、矢作俊彦「ららら科学の子」「ロング・グッドバイ」、寺田寅彦「柿の種」「科学と科学者のはなし」、高橋治「絢爛たる影絵-小津安二郎」、山口洋子「ザ・ラスト・ワルツ〜「姫」という酒場」、中村うさぎ「壊れたおねえさんは、好きですか?」、清水ちなみ編「大独身」、中村よお「関西フォーク70'sあたり」、ピーター・バラカン「ロックの英詞を読む」、みうらじゅん「フェロモンレコード」、森達也「放送禁止歌」、小嵐九八郎「蜂起には至らず〜新左翼死人列伝」、保坂正康「昭和史七つの謎」

デニス・ルヘイン「ミスティック・リバー」、ジェイムズ・クラムリー「ファイナル・カントリー」、ローラ・ヒレンブランド「シービスケット」、E・アニー・プルー「シッピング・ニュース」、オースン・スコット・カード「消えた少年達 上下」

近藤ようこ「水鏡綺譚」、泉昌之「ジジメタルジャケット〜ザ・デルタ」、鈴木翁二「オートバイ少女」、永島慎二「漫画家残酷物語 1.2」、山上たつひこ「喜劇新思想体系 完全版 上下」、美内 すずえ「ガラスの仮面 1〜23巻」 

 時代物がたくさんだった

 こうして眺めると時代小説、青春小説が増えて翻訳ミステリが減ったねえ。時代小説は好きでずっと読んでいたけど、ついに江戸市井物の大定番「御宿かわせみ」「剣客商売」「鬼平犯科帳」に手を付けてしまった。TVドラマになったりで有名な小説だから今まで遠慮していたけど、我慢できず読み始めたら面白い面白い。「御宿かわせみ」のるいと東吾、TVとは違ってエッチな振る舞い多し。るいなんて「夜ごとに新鮮な燃え方をみせる」だし、「東吾はいつもより激しくるいを愛撫した」とかね。やっぱ読んだ方が面白いってことですね。「魚の棲む城」は田沼意次と彼を支えた人々を描いて爽やかでした。花村萬月の時代物「私の庭〜浅草篇」は幕末から維新の浅草が舞台。でもタッチは相変わらず。最下層に生きる人々の目線が良い。暴力描写に品があります。宮部みゆきにとってはもはや十八番と言える江戸市井物。「天狗風」「本所深川ふしぎ草紙」ともに捕物帖だけど、テンポと語り口かな、なにか新しい感じがするんだよね。犯行の動機に心理的なものを持ってきたりで、ほんとに巧いなあ宮部さんは。

 
「ツ、イ、ラ、ク」「永遠の出口」「夜のピクニック」は青春・学園・恋愛物でどれも面白かった。青春物といっても小学校から始まるのもあるから、うちの小学生の娘もこれからこんな経験を積んでいくのかなって読み方もできるから興味が湧いたりね。「夜のピクニック」は高校生が学校行事で80キロ歩くお話し。そこに様々なドラマが練り込んである。これがじつに巧い。読む喜びを味わいました。「ツ、イ、ラ、ク」のラスト、二人が再会するところ、この再会は必要だったのかな?

 「ウェルカム・ホーム!」こんなに素敵な小説を書いて、発売されてすぐに自殺した鷺沢萠。彼女は帰るべき家を見つけることができなかったのか。ショックでした。「おめでとう」は短編集。川上弘美のムードです。ってね。好きだなあこの感じ。けっこう世間的に見たらいろいろワケアリだけど、平穏に生きてるワタシ。なんですね。
 坂口安吾の有名な
「不連続殺人事件」。人里離れた旧家の豪邸に集まったワケアリの人達がバタバタと殺されていくってミステリー。ああ懐かしく面白かった。
 期待した
乙一、舞城王太郎は楽しめなかった。残念。俺の感性が古いのか?「アフターダーク」は村上春樹にしては短すぎたのか余韻がいまいち。

 矢作俊彦はハードボイルドから抽出されたスタイリッシュな文体が楽しい作家として記憶していた。ワイズクラック(軽口)ばっかで血生臭さの無いハードボイルドって感じかな。
「ロング・グッドバイ」はまさにそんな感じ。だけどグレードアップしてる。面白さに降参です。「ららら科学の子」にはもっと降参(笑)。矢作さん、こんな作風もあったんですね。'70年前夜の学生運動盛んな頃、文革の嵐吹き荒れる中国へ密出国した大学生が、中国の辺境で農民として暮らし、そして30年後、日本に密入国して戻ってきた話。ちょっとした浦島太郎なんだけど、違うんだな(ふふふ)。戻ってきた21世紀の東京に同調することなく毅然としちゃってるんだね、この男。読後の余韻が良かったよ〜。

 
「ミスティック・リバー」「シービスケット」「シッピング・ニュース」はどれも映画化されたやつですね。どの映画も見てないんだけど。3作とも面白かった。ルヘインの「ミスティック・リバー」にはもう風格が漂ってます。悲しみに満ちた、静かな鈍色のミステリーですね。しかしねえ、TVの映画予告編で見たショーン・ペンの嘆きのイメージがずっと付きまとってたな。「シービスケット」は実在したアメリカ競馬の話。物語の本筋も感動なんだけど、米国大陸興行モノとしても面白かった。アメリカン・ドリームが真に美しかった時代の話だね。「シッピング・ニュース」は地味な物語なんだけど、これがなかなか滋味なお話しなんだよね。北の海辺の物語には惹かれものがある。ヒギンズやフォレットの面白い活劇小説の舞台となっていたからかな。

 期待大だった
「消えた少年達 」「ファイナル・カントリー」はイマイチのめり込めなかった。「消えた少年達 」のような悲しい話は苦手です。
 
「壊れたおねえさんは、好きですか?」「大独身」。なんで買ったんだろ?夏の暑さのせいだな。タイトルに負けたんだな。NHKに出てる中村うさぎを初めて見たとき、壊れたおねえさんの正体を見たと思ったよ。う〜ん好きじゃない!でも本は面白かった(笑)。
 小津安二郎、姫という酒場、関西フォーク、放送禁止歌、新左翼。昭和という時代、戦後から30年代40年代までの昭和ノンフィクション。どれも興味深い読み物だった。フェロモンレコードもまさに昭和な感じだし。

 漫画の
「漫画家残酷物語 」「喜劇新思想体系」はすでに持ってるけどボロくなったので買い直し。「ガラスの仮面」は浜田真理子さんに激しく薦められたので23巻一気読み。面白くて読み始めたら止まらなかった。でも一番熱心に読んでたのはうちの娘です。何度も読み返してるもんね。「オートバイ少女」は友部正人さんの影響で読みました。と言うか漫画雑誌「ガロ」好きだったから鈴木翁二は避けて通れません。

 その「ガロ」で出会った近藤ようこ。かつての青林堂から出ていた数冊は読んでいたけど、この
「水鏡綺譚」は知りませんでした。'88年から'91年までコミック誌で連載されていたけれど打ち切りとなり、12年の歳月を経て完結の1篇を描き、こうして単行本として出版されたのだそうです。帯に高橋留美子の推薦文がありました。二人は同じ新潟市の出身で同級生って話も?そう言えば高野文子も新津の出身で同世代ですね。「水鏡綺譚」はワタルと鏡子がいつも腹を空かしながら(笑)旅をするお話し。近藤さんは中世日本の定住者と非定住者の関係をきちんと捉えた上でこの物語を作っています。作者のあとがきを読んで納得がいきました。「カムイ伝」が好きだったことと網野善彦に注目していたことですね。自分もカムイ伝や白土三平の漫画を読み耽ったせいで網野さんの本に出会えた気がしていたから、近藤さんのあとがきは嬉しかった。さらに、「水鏡綺譚」は彼女が唯一、好きで描きたくて喜んで楽しくやっていた作品で、自分が子供の頃面白いと思ったことを、再現して伝えたかった作品だそうです。読み終わった時、ああ本当に良かったね、完結篇を描くことができて、そして単行本として世に出すことが出来て、本当におめでとう、という気持ちになりました。拍手喝采!

 「私は昔、漫画が好きだった」という気持ちを支えに創作を続けたという近藤ようこ。「私は歌が好きです」と書いていた浜田真理子。記憶に残ったふたりの言葉。このシンプルなモチベーションこそ尊いのだと思いました。はい。「俺はロックが好きだ」はいはい。

 そこで2004年に読んだ本ベスト3というか深く印象に残った3冊は、

  ☆ 「ミスティック・リバー」デニス・ルヘイン
  ☆ 「夜のピクニック」恩田陸
  ☆ 「ららら科学の子」矢作俊彦
  ☆ 「水鏡綺譚」近藤ようこ

 おっと3冊じゃなかった、けどいいやね。誰が読んでるわけじゃなし。
本を読んだり、こうしてパソコンに打ち込んだりって、目だよね目。目が大事。年々目が疲れやすくなってきてるね。小さな活字はメイワクだな。頼むから活字は大きく!ね。
 

 2002年に読んだ本 2003年に読んだ本