レキ奇譚その6

                     エレキ親父


日本のインスト巨匠 続編

最近、エレキ奇譚コーナー始まって以来の大事件が発生し、急遽続編の投稿となりました。その大事件とは、「エレキ奇譚その5」で日本のインスト巨匠特集としまして、三根信宏先生と寺内タケシ先生を取り上げて、小生の毒舌混じりの軽口講評を書いてしまったのですが、それを三根信宏先生ご本人に見られてしまい(どうやって捜されたかは不明ですが?)、しかも三根先生から「見ました・……云々」と直接メールを戴いてしまったのです。その時のエレキ親父の様子を想像してみて下さい。腹を抱えて大笑いされる事請け合いです。なにせ、先生の奏法について素人のエレキ親父が勝手に想像して書いた拙い内容で、その上「欠点は・…」などと大口まで叩いたのですから。
メールがご本人らしいと分かったときは、顔面蒼白で冷や汗をかきながら、頭の中で「後悔先に立たず」のことわざとか、「ああ、俺の人生はこれで終ったか!」という絶望感とか、「この大馬鹿エレキ親父め!」という後悔等がグルグルと走馬灯のように回り、足も勝手に動いて走馬灯の回転に同期して部屋の中をグルグルと回っておりました。(あはははは・………引きつった笑い!)

暫くしてやっと我に返り、先生に謝罪のメールをお送りいたしました。三根先生ならびに先生のファンの皆様、それからエレキ奇譚の読者の皆様に対しまして、この場をお借りして深くお詫び申し上げます。今後は軽口や放言は慎みますので、宜しくお願い申し上げます。(でも、軽口、放言が小生の唯一の取柄なので、たまにはお許し下さい!)

その後、また先生から暖かいメールを頂戴し、多分お許し頂けたものと親父は勝手に解釈し、心の平安を得た次第です。(また、また自分勝手な解釈してるぞ、親父は!)

それにしましても、インスト巨匠の三根先生と一介のエレキ親父がメール交換出来る等と言う幸運は、昔であれば絶対有り得ないことでして、これも森首相のいう「IT革命」の恩恵でしょうか。(ちなみにエレキ親父はIT革命のことを「アイテェー革命」と発音する。CDの発音はもちろん「シーデェー」であります。戦後の英語教育は間違いでした。)

 さて、前回の訂正事項につきまして、まず寺内タケシ先生の項では「ブルージーンズでは正調寺内節のレコードが好きです・・…云々」と記載してましたが、正しくは「ブルージーンズではレッツゴーエレキ節・…云々」の誤りでした。「正調寺内節」は寺内先生ご病気復帰後のバニーズのアルバムです。訂正しお詫び致します。ちなみに、「レッツゴーエレキ節」のアルバムは確かメンバーがきちんと座っている普通のジャケットと、メンバーがおどけている裏ジャケットとあって、当時話題になったような記憶があります。小生は残念ながら普通の物しかもってませんが。

さて、いよいよ本題の日本(世界でもよい)のインスト最高峰「三根信宏先生」について、前回調査不足や記憶違い等もあり、舌足らずで稚拙な内容でしたので今回は力を入れて書きたいと思います。

但し今回もまた、ほとんどが小生の非常に少ない情報と拙い知識の中から生まれた想像(だいたい、先生にお会いした事すら無いのですから、本当のことなど解かる訳がありません。)ですから、きっと見当違いの大間違いを犯しているはずです。(笑)予めお断りしておきます。以下の内容は、「田舎のエレキ親父の妄想」と思っていただき、奏法の解説については「話し半分」でご理解ください。

三根先生のギターについては、特筆すべき点だらけなのですが、何と言ってもあの「美しいトーン」でしょう。シングルコイルPU特有の透明感溢れるクリアサウンドはもちろんですが、よくある「ペンペン感」のまったく無い芯のある甘いサウンドは先生特有のものでしょう。これは、先回も述べたようにピッキング位置が開放弦長のちょうど4分の1位置付近の為と推測されます。この位置は開放弦のハーモニクス点でもあり、ここでヒットすることにより普通の音にプラスして、倍音の中でも低い(乗数の少ない)部分が強調された合成音となりす。これがダイレクトにPUで拾われるのと平行して、ボディへ伝達され、さらに各倍音(高調波)を含む音に変化し、それをPUがやや遅れて検出する訳です。元々4分の1位置付近でヒットされた音は振幅が一番大きく甘い音です。それが前述の伝達経過により、ギター材と相俟ってさらに甘く変化し遅延されてミックスされる為、シングルコイルPUとは信じがたい甘い音になっているのでしょう。さらに、Pu切替SWをリヤ+センター等のハーフトーン位置にすることにより波形がが干渉し合い、さらに甘さが倍増されます。ハーフトーンの特色として一般的には、ネックよりでヒットすれば甘さがより強調され、ブリッヂよりでヒットすれば、PU単独では拾えない高周波成分を拾う事が出来て、ちょうどアンプで言えばトレブルとベースはノーマルでミドルを「0」にした時のようなトーンになります。これは、波形の干渉と同時に場所の違う2個のPUが拾う倍音のせいかと推定されます。ギター本体ではこのような現象が発生し甘く美しいトーンになっていますが、先生はさらに音空間の魔術師でもあらせられるのです。つまり空間系のエフェクト処理です。これは主にディレイとリバーブですが、当然どちらもステレオです。先生が教則ビデオでもおっしゃっておられるように、ライトとレフトのディレイタイムの設定を変えるのがミソです。これがステレオリバーブ処理によりセンターの生音と左右の異なるディレイ音が広大な空間を生み出します。ただしディレイのレベルは少な目でリピートは多目にでしょうか?(多分?)

私事になりますが、小生もこの空間系のサウンド処理は大好きであります。多分5、6歳の頃だったと思うのですが、1斗缶(ふ、古い言い方!親父万歳です。)、つまり18L缶の空缶の上をくり貫いた物に頭を突っ込んで声を出すと、リバーブがかかることを発見し、よく頭を突っ込んで声を出してたようです。(異様なガキです。)後にエコールームや鉄板エコーなるものを知り、妙に関心したり感慨にふけったものです。ギターをやるようになってから一人で多重録音もするようになったのですが、貧乏青年の小生はいいアンプを買う前に、エーストーンのテープエコーを買いましたよ。当時はまだステレオのものは無くて、モノラルでしたので苦労しました。「生音」と「生音プラスディレイ音」と「ディレイ音のみ」の3種類に分けて、パンで微妙に位置を決めてステレオのリバーブにぶち込み録音したものです。今のステレオディレイに及ぶべくもないですが、それでも結構広い空間が出せました。

先生のギターによる空間は、曲により色々な情景を見せてくれる視覚的なものです。狭い我家でも一旦先生の曲が流れ出せば、そこには広大な風景が現れます。ある時は寂とした湖に影を映す遥か遠い山々、またある時は白い砂浜と広い海、そして何処までも青い空、そしてまたある時は、遥か霧の彼方からから聞えるあのギターの音。そうなんです。先生のギターは聴覚だけでなく視覚的効果も併せ持つ特殊なものなのです。(でもこの現象が自分だけだったら、相当ヤバイですよお父さん!・・……え?)

ともかく、シングルコイルPUの可能性のうち、一つの極限がジミ・ヘンドリックスなら、その対極に位置するのが「三根サウンド」と言えるでしょう。ジミの「ストラト+マーシャルサウンド」はシングルコイルPUの可能性を極限まで引出した点で、非常に素晴らしい功績と言えるでしょう。シングルPUは低出力でどうしてもペンペンとしたものになりがちですが、彼の音は荒々しさの中にも独特の美しさがあり、レスポールギターのハムバッキングコイルPUにも勝ります。先生のサウンドはジミのものとはまったく異なるトーンですが、シングルコイルPUの極限の美しさを引出してます。これもまたペンペンサウンドとは程遠く、甘く切ないトーンです。空間系のエフェクトを使用したサウンドは、他にもシャドーズやスプートニクス等が有名ですが、いま一つ繊細さに欠け到底「三根サウンド」には及ぶべくもありません。

さて先生のギターは左手と右手の同期のとれた絶妙なコントロールも特徴の一つでしょう。それは早引きに特に現れています。例えば「春の海」などのアドリブプレイで左手の四指を使った早引きがありますが、小生のような素人が弾くと右手はどうしてもトレモロ弾きになり、左手は右手のヒットと同期が合わずにミュート音混じりになってしまいます。しかし、先生は右手はキッチリとリズムに乗った倍速弾きで、左手は完全に「音が鳴っている。」のです。これがまたとてつもなく早いフレーズですから、とても真似できません。よくあるディック・ディルのようなトレモロ弾きとは、一線を画すものなのです。例として「熊ん蜂の飛行」なども驚異的なプレイの一つでしょう。

前述のごとく、先生のプレイには、一聴しただけでは解らない奥深いテクニックが隠されているため注意が必要です。そうした中の一つに、ヴォリューム奏法もあります。ヴォリューム奏法とは、すでにご存知のようにヴォリュームコントロールを0にしてヒットし、即座に小指等でヴォリュームコントロールをフルに戻すとアタック音の無い、「ヴァイオリン」か「オルガン」のような音になる奏法のことです。これも普通は、ヒットのタイミングはリズムから外れずに行いヒット後にボリュームを上げる為、実際に出る音は遅れた感じになります。それはまたそれで良しとする音楽もありますが、先生の場合はヒットのタイミングが完全に先行し、小指の絶妙なコントロールでリズムの頭に音が出てきています。これは、いうのは簡単ですが、常人の成せる技ではありません。前ノリ、後ノリなどや、タメ等はある程度の人ならば誰でも出来ますが、この場合、VOLUMEコントロールが「0」でなければ、出る音は明らかに外れているタイミングでヒットされているのです。遅いフレーズならまだしも、早いフレーズでも完璧に頭で音が聞えるのです。ですから、もし仮に体内にリズムマシーンがあったとして、普通は1個ですが、この奏法では2個必要になるはずです。ヴォリューム奏法をやる方は沢山いますが寺内先生をして、やはり遅れパターンの奏法です。昔、パープルシャドーズの今井さんという方だったと思いますが、この方も結構ヴォリューム奏法が得意で上手かったと思います。返しが早くて遅れが目立たなかったのですが、やはりヒットは頭だった様な気がします。

ですから、普通の人間は先生の奏法を真似しない方が良いと思います。絶対に外すこと請け合いです。なぜなら、私たちにはリズムマシーンが一つしかないのですから。

さて、数ある先生の技の中でも必殺技は何といっても、例の「アイーン奏法」でしょう。(注:これは小生が勝手に名つけた名称で、先生の許可はとってません。)これはヒットする前にトレモロアームで音を下げておき、ヒット後に戻して本来の音階にまで上がる奏法です。昔の先生のギターはトレモロがやや浅めのものでしたので、そう低い位置から出発してなかったのですが、でも随所に「アイーン」は出て来ています。ところが最近の先生のギターは異常に低い音(音が聞えないぐらいまで下がるのだ!)まで下がるトレモロなので、すごく深い「アイーン」になっており、ウットリとしてしまいます。この「アイーン」はどれくらいすごいかと言うと、あのブルースのアルバート・コリンズの「・キョキョーン.カラコロケ!」よりインパクトあります。もちろんヴェンチャーズの「テッ・テケテケテケ・……」よりもです。

もちろん先生は「アイーン奏法」だけでなく、トレモロアーム奏法の全般について誰よりも早くから完璧でした。世にアーム使いは沢山いますが、例えば前述のジミ。彼の「ギャイーッ・イーン」もいいです。寺内先生の「ドウィーン」もいいです。ボー・ウィンバーグの「ケエエーン」もいいです。でもやっぱ「アイーン」が最高でしょう。アームと言えば先生は、ハーモニクス音との併用も随所に使われます。これもジョー・サトリアーニなんかも天才的なプレイをしますが、先生は遥か昔(失礼、そんなお年ではない?)からやっておられたのですよ。ともかく、先生のプレイについて書き始めたら終らないので、そろそろやめますわ。「三根サウンド」を一言で言い表すならば、やっぱ「女殺し」でしょうか?(これは、セクハラに抵触しそうだなあ。女性の皆様失礼!)

最後にくどいようですが、先生の教則ビデオ、CD(あくまでもシーデェーと読む)、教則本が楽器店で販売されてますので、是非購入の上、小生のいう事が正しいか、間違っているかご判断願えれば幸いです。

では、ごめんください。


 第1弾「エレキ奇譚」
 
第2弾 フェンダー・シングルコイルPU・フェチ
 
第3弾 自慰的改造のススメ
 
第4弾 掟破りの改造(照れキャスター・親父カスタム)
 
第5弾 日本のインスト2大巨匠
 
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