ロスタイムにご用心
第4話 EURO2000
サッカー欧州選手権開幕!!!
そして官能のクライマックス・・・EURO2000ファイナル
フランス vs
イタリア
7月2日 オランダ、ロッテルダム、フェイエノールト・スタジアム
「ラスト・キス」
フランス、イタリア両チームの背後に控えた8名のブラスバンドによる両国国歌の演奏。
すごくいい感じ、いい響きだった。関係各国の王族、大統領、首相を迎えてのヨーロッパ選
手権の決勝戦。その国歌演奏となればブラスバンドの方もコンセルト・ヘボウのマエストロ
達かな、などと想像しつつ、肩を組み腕を組む22人の屈強の男達の美しさに身震いした。い
よいよ始まるのだ。
サッカー・ファンお馴染みのフランス・キャプテン、ブランとGKバルテスのキス。183セ
ンチのスキンヘッドにキスをするブランは190センチ。この大男達のちょっとコミカルなキス
・シーンも今回が最後となりそうだ。ブランがナショナル・チームからの引退を表明したから
だ。勝利へのオマジナイのキスを始めて以来フランスは負け知らず、と言うよりブラン、デサ
イー、テュラム、リザラズの不動の4バックになって以来、つまり'96年以来フランスは負け
ていないのだ。凄い安定感だ。
ゲームが始まった。意外にもイタリアが攻勢。アレッと思ったかどうかフランスの動き出し
が悪い。ジダンにいたっては「オレちょっと様子見てるから」って感じでノンビリ気味。イタ
リア何度かフランスのゴールを脅かすもGKバルテスまったく危なげなくハネ返す。ようやく
フランスにエンジンが掛かり始めゲームのペースを握る。好調アンリがイタリアのゴールを急
襲。速い速いまるでチータのように俊敏だ。フランス攻勢が始まるが、ここではイタリアGK
トルドがバツグンの安定感でハネ返す。両チームともGKが絶好調。0-0で前半終了。
後半、ジダンを中心にフランス攻勢。イタリアなんとか凌ぐもアップアップ気味。そこでイ
タリア、デル・ピエロを投入。エースが登場しイタリア中盤に活気が戻る。そして10分、ペ
ッソットのセンタリングをデルベッキオが決める。イタリア先制!さーて面白くなった。ディ
フェンシブに腹をくくったイタリアは強いぞ。世界一かもしれない。先制したことでゲームは
イタリアのものとなる。フランスは攻め続ける、イタリアは守り続ける。イタリアのペース。
ロスタイムに入った。フランス猛攻。でもイタリアが逃げ切るだろうなって思いながら見てい
た。しかし、点が入る時ってこんなもんだ。途中交代で入ったFWウィルトール、するするっ
とゴール前に侵入して放ったシュートはイタリアの堅陣ネスタ、トルドを抜き去ってゴール!
なんとまたも延長戦。土壇場で追いつかれたイタリアがどれだけ気持ちを切り替えてゲーム
に臨めるかが勝敗を分かつ要因だろう。イタリアは必死に守っている。ただ攻勢に出る余裕が
感じられない。PK戦に持ち込みたいところだろう。同点に追いついたフランスには勢いがあ
る。だからPK戦は避けたいだろう。攻めに攻めたフランスに勝利をもたらしたのは、またも
途中交代で入った2人、ピレスが折り返しトレセゲが決めた。見事なVゴール!!!
フランスが優勝した。真に強いチームが優勝した。心地よい勝利だった。イタリアが勝って
いたら?優勝してたら?きっといろいろと言われるだろう。「サッカーの進歩が閉ざされた」
とか「今大会の真の王者は・・・・だった」とか。
ファイナリストは称えられる。ファイナルの場に立っていることが栄誉なことで、ファイナ
リストに敗者はいないなどと言われるらしいが、ピッチにうずくまり泣き崩れるイタリアの選
手達の悲しみを目の当たりにすると、そんな言葉がキレイゴトに感じられてしまう。
ワールドカップに優勝し、2年後のヨーロッパ選手権にも優勝したのは今回のフランスが初
めてだそうだ。フランスは王者らしい戦い方で再び王者となった。そしてフランスの「将軍」
はプラティニからようやくしかも完全にジダンに移り、ジダンが真の将軍となった。
EURO2000が終わった。何故か去っていく選手達のことが思い出される。ストイコビッチ、
ハジ、マテウス、ブラン、その国の顔として活躍してきた彼らの引退の話を聞いた。
寂しい気持ちになった。だけど時代は変わっていくんだから。
セミ・ファイナル・・・クライマックスへの序章
ポルトガル vs
フランス イタリア vs オランダ
EURO2000のベスト4。いやあ~いい組み合わせだこと。願ったり叶ったりとはとは
このことだ。フランス、オランダは実力どおり、イタリアは意外に強かったし、ポルト
ガルにいたっては嬉しい絶叫だ。大好きなポルトガルだけどベスト8あたりでコケると
思っていたのに・・・も~嬉しいぞ!
「グラウンダーのパス」
さて今大会、ここまでゲームを見てきて感じたのは、とくにベスト4まで勝ち上がって
来たチームについて言えるのは、グラウンダーのパスの精度とバリエーションの豊富さだ。
どのチームも(イタリアは・・・)ダイレクト・パスないしワンタッチ・パスがしっかり
と出来、パスの長短そしてサイド・チェンジ、縦へのスルーと攻撃のパターンが豊富だ。
アーリー・クロスをゴール前の放り込むような賭けはしないし、おそらくキライなんだろ
な。まあイタリアは伝統的にカウンターのチームだけど、これもゴールに至るプロセスを
単純にしたいだけで、パスは低く強く正確だ。いまどきボヨ~ンとした浮き球の応酬が見
られるプロ・リーグはJリーグくらいかもね。
それでは官能のクライマックスへの序章、いきましょう。
第3話 EURO2000 怒濤のトーナメント・・・決勝トーナメント篇
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