ただこの1ケ月(2ケ月)の間にGETした音盤の第一印象を10点満点で採点しました。
あくまでも、第一印象ですから。
3月〜4月
ピチカート・ファイヴ
/ さ・え・ら ジャポン
この楽しさには脱帽です。何も語らず楽しみたいって感じです。ジャケット・ブックレットの作り
凝りようはハンパじゃなく凄面白い。テーマは東京オリンピックの頃の日本ですね。MMのインタ
ビューで小西康陽が語っていて、中村とうようの頃の「(ニュー)ミュージック・マガジン」と「話
の特集」が彼の文化的興味を作ってきたところがあったんだそうで、いまサブ・カルチャーと呼ばれ
るものとはまた違うものがあったように思い、このCDはそれを目指してつくってるんだって気がする
と語っていました。僕には小西氏の立っていたい位置がわかるような気がします。国内アーティスト
のCDって2.900円前後でしょ?すごく高いと思うけど、このピチカートのCDの作りならぜんぜん惜し
くはないな。素晴らしい才能に拍手拍手!!! 10点
Bob
Dylan / Live 1961-2000
3月14日武道館でディランを観た。'78年初来日の武道館以来のディランだった。今のディランはア
ルバム制作よりライヴに力を入れているようで、'88年から始まった「ネヴァー・エンディング・ツア
ー」は年100回のペースで今でも続行中らしい。で、この3月のディランは最高だったんだ。バックの
4人はワイン・レッドのスーツ(に見えた)御大ディランはキラキラの白いスーツ。ストラトを脇の下
に抱えギターのヘッドを下げた感じでギターを弾き、唄った。ただ歌にだけ誠実であればいいんだって
感じで客に媚びるそぶりはまったくなし。有名曲が次から次と唄われても大合唱なんて起こりっこない
って雰囲気。ディラン・ファンは知っていて、安易に唄ったりしない(だいいち原曲からあまりにかけ
はなれているので唄えない)でも会場の雰囲気は凄く良かった。コンサートが終わる。ディランは一言
の挨拶もせずお辞儀もしない。ただ中空をにらんでいるだけ。そんなディランをみんなが愛しているの
がよくわかった。そんなコンサートだった。このアルバムの1曲目は2000年、2曲目は'61年録音の
共にトラディショナル曲。この2曲がつながってもまったく違和感がない。デビューの頃の歌に対する
表現方法が今でもまったく有効だって証しだ。マディーやジョン・リー・フッカーのブルースが未だに
新鮮で力強く響くように、ついにディランもそんな魔法の力を身につけたに違いない。アカデミー賞の
TV中継でディランを観た。受賞曲の「シングス・ハヴ・チェンジド」を唄うディランに笑ってしまっ
た。終始カメラ目線で唄う様がダリのようで、またイカサマ師のようでもあり、もしかしてディランこ
そ20世紀最大のイカサマ師だったりして。21世紀60才のボブ・ディランはニヒルに笑う。 10点
V.A / 日本吹込み事始 1903
1903年とは明治36年だ。日本人初吹き込みこそ1900年パリ万博時、ヨーロッパ巡業中だった川上
音二郎一座に譲ったが、日本での初吹き込みは英グラモフォン盤で、フレッド・ガイズバーグにより
録音された。それをCD化したのがこのアルバムです。英グラモフォン、正式にはグラモフォン・アン
ド・タイプライターといい現在のEMIです。当時英グラモフォンは世界中でこのような録音を行って
いたらしく、その録音盤は現在ロンドンのEMI本社に保管されているという。これだけでも凄い。
本盤の内容は雅楽、能、長唄、常磐津、落語、声色、かっぽれ、法界節など。当然どれも馴染みの
ないものばかりなので興味深く聴けた。面白かったのは「君が代」。洋楽器合奏となっていて演奏者
は吾妻婦人音楽連中。解説のよると吾妻婦人音楽連中とは新吉原の芸妓による吹奏楽団だという。こ
んなのがあったなんて驚きだ。 8点
Dweezil Zappa / Automatic
親父がフランク・ザッパ。偉大で雄大なザッパ大山脈が親父じゃ乗り越えるのはとてもムリだけど、
ギターは巧いよ。この新作ではヤハリのメンツ、T・ボジオ、S・チュニス、M・ケネリーなんかの
助けを借りて、伸び伸びとギターを弾きまくります。故マイケル・ヘッジスに捧げたアコースティッ
クな曲と、いかにも親父ザッパ風なおとぼけ曲「You're A Mean One
Mister Grinch」そしてカバー
曲「ハワイ・ファイヴ・オー」が楽しめましたぜ。 8点
ゆらゆら帝国 / ゆらゆら帝国 3
気になってた(気に入ってた?)もんで新作も聴いてます。一見2枚組かと思わせるCDケース入りで
すがCDは1枚で豪華?ブックレットが付いていました。ゆらゆら帝国が気になる理由は彼等のルック
ス、サウンドが古臭いからです。ロック・トリオでギタリストがヴォーカリストでしかもリーダーで
というのに憧れます。だから坂本慎太郎みたいなヤツは大好きだ。とくに本作には親近感すらおぼえ
る。聴き終えた後にメロディを口ずさんでたよ。ただ僕は古臭いロック・ファンなのでギター・ソロが
欲しいとこですが。 8点
Olu
Dara / Neighborhoods
ジャケットのとおりだな。芝生に寝そべるサングラスの黒人おやじ。なんか気持ち良さそう。そして
そのサウンドは悠々自適って感じです。60才にして2作目のソロ・アルバムの完成です。僕が最初に
オル・ダラを知ったのは'80年頃、NYロフト・ジャズ・シーンの先鋭的コルネット(トランペット?)
奏者としてだった。特にオリバー・レイクやデヴィッド・マレイ等と参加したJ.B.ウルマーの作品の
凄まじさにはブッとんだ。そんな彼の'98年の初ソロ・アルバムには驚いた。ギター弾いて唄ってるん
だもの。改めて彼の経歴に目を通してみて、ミシシッピ生まれの彼はブルース・シンガーでありギタリ
ストでもあったのだそうだ。本作にはDr.ジョンとカサンドラ・ウイルソンが参加している。カサンド
ラはともかく、Dr.ジョンの参加はずばりニューオーリンズ風味でしょう。ミシシッピ〜ニューオーリ
ンズ〜カリブ〜アフリカ〜・・・いろんな感じの音楽が融け合い、心地よいグルーヴを紡ぎ出す。
なんと素敵な音楽!!! 10点
Nils Petter Molvaer / Solid Ether
ノルウェイのトランペッターによるECM第2弾。ジャズ・レーベルとしてのECMが大嫌いだったの
だが、なんと21世紀になってECMのジャズを聴くことになるなんて。ただこれがジャズかっていう
と、すごくクセものです。マイルスの風情はあります。バックで鳴っている音はノイズです。サン
プリングやら打ち込みを用いたテクノやらドラムンベース。で、刺激的かというと僕にはそれ程で
した。結局アンビエントに聴かれちゃうって感じもするし、やっぱりECM的かな。 7点
Cecil Gant / I Wonder〜The Best 1944-1948
ブルースの大ヒット曲「アイ・ワンダー」で有名(日本では無名)なセシル・ギャントのベスト盤。
'44-'48年の作品集です。素晴らしい!歌声も味があっていいけど、ピアノが凄い!「アイ・ワンダ
ー」しか知らなかったもんだから、そのブギ・ピアノに歓喜歓喜。う〜ん偉大です。 9点
Magic
Sam / With A Feeling
やっぱりマジック・サムはいいね。'57-'66年のコブラ〜チーフ〜クラッシュ録音のコンプリート
盤。'67年の「Out of Bad Luck」「She Belongs to
Me」が凄くいい。シカゴ・ブルースのニュー
ウェイブって感じで。亡くなった年'69年のライヴがあまりに鮮烈だっただけに、彼が生きていたら
ブルースをもっと違うところへ連れていけたんじゃないかって思えてしまう。真にイキの良いブルー
スはこの辺にしかないのかもしれない。 10点
Smokey Hogg / Deep Ellum Rambler
テキサス・カントリー・ブルースの人気者、スモーキー・ホグの'47-'51年モダン録音集。カラっと
乾いた野放図な歌いっぷりとアコギとピアノの絡み具合に親近感をおぼえるなあ。 8点
Ike
Turner & His Kings Of Rhythm / Ike's Instrumentals
何を隠そう(隠す必要はないんだけど尋ねてくれる人がいないだけ)僕はアイク・ターナーのブル
ース・ギターが大好きだ。そこへもってきてコノ「Ike's
Instrumentals」またも歓喜歓喜。アイク
って言ったらアイク&ティナ・ターナーでティナ・ターナーの元ダンナ。オマケに暴力亭主で悪人と
言われてきた。真相は定かでない。う〜んたしかにそのギターは凶暴だしワガママな感じはする。ス
トラトのアームをこれでもかとギョワンギョワン鳴らし、グリッサンドにトレモロとやりたい放題。
ブルース〜R&B界を股にかけた新しもん好き・変わりもん好きな稀代のサウンド・クリエイター。
エレキ好きなら血圧がもう上がりっぱなし。ご注意を!! 10点
Sharon
Shannon & Friends / The Diamond Mountain Sessions
アイルランドの蛇腹娘。ドーナル・ラニー一座の看板娘としても有名で、しかもイイ女である。
当然大好きです。シャロンの弾くアコーディオンを中心としたアンサンブルは音楽のそして合奏の
楽しさに満ちている。ロックやジャズとはひと味違った楽器演奏の楽しさ力強さに、音楽の持つ根
元的なものを感じる。ケルトの魔力かな?John
Hobanのヴァン・モリソン絡みの唄が良かったし
Dessie O'HalloranとHothouse
Flowersの地元組の唄にグッと来た。もちろんケルトの盟友、
ガリシアのカルロス・ヌニュスも大活躍。ラニーのブズーキってダイナミックだな。 10点
Cisco Houston / Best Of The Vanguard Years
若き日のボブ・ディランも憧れたフォーク・シンガー、シスコ・ヒューストン。その名前と数曲の
ホーボー・ソングは聴いたことがあったが、ずっと前'67年に亡くなっていた人だったんですね。
やはりエリック・ワイズバーグとの共演曲がいいなあ。「Do Re
Mi」とかね。 8点
V.A /Nuggets From Nuggets
'60年代中頃のガレージ・パンク〜サイケ・ロックのコンピ物。もちろんアメリカの。知ってるバンド
や曲はほとんどなし。これはまさしくGSですね。'60年代中頃って世界中がGSブームだったらしいか
らね。ジージーしたファズそしてトレモロにリバーヴ、ポップな曲調。なるほどね。 7点
Bob Dorough & Dave Frishberg / Who's On First?
ボブ・ドロウ、2000年のブルーノート作品。そして本人76才!イエーッ!まったくイカしたジイさ
んだぜ。親友デイヴ・フリッシュバーグとのデュオ・ライヴを録音したもので、ピアノ2台にヴォー
カルというもの。ピアノもヴォーカルも実に達者。楽しいジャズです。 8点
Sonny
Landreth / Levee Town
お〜いきなり豪快なスワンプ・ロック!スライド・ギターがゴキゲンです。ルイジアナのザディコ・
ロック・マン?、ソニー・ランドレスの新作(2000年だけど)です。スライドの超絶テクは有名で
すが、本作ではヴォーカル良し楽曲(すべて自作)良し、大充実な南部ロック・アルバムです。
それにしても彼のスライド・テクニックは独特。右手小指にバーをハメています。(ここまでは普通)
スライドしながら残った右手の人差し指・中指・薬指を駆使し(ベンドしたり押さえたり)表情豊か
なギター・サウンドを創り出しているようです。う〜ん素晴らしい!!! 10点
今月はここまで。
前月のGet音盤
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