音盤 BAN BAN

        THE FIRST IMPRESSION

ただこの1ケ月(2ケ月)の間にGETした音盤の第一印象を10点満点で採点しました。あくまでも、第一印象ですから。

2002年 5-6月

Richard Manuel / Whispering Pines
 リチャード・マニュエルの感傷の虫が乗り移って、聴いてるこっちが切なくなるようなアルバムだ。彼が亡くなる(自殺したんだ)半年前'85年のライヴ音源が初めて世に出たわけだ。彼はナンバーワン・ロックバンド(いいだろ!)ザ・バンドのリード・ヴォーカリストだった。不滅のアルバム『ビッグ・ピンク』は彼の存在抜きには成立し得なかったマジックに満ちた音盤だ。ザ・バンドの2枚目以降のアルバムはどれも優秀なロック・アルバムだと言えるが、このデヴュー盤『ビッグ・ピンク』だけはそんなんじゃ括れないモノが横溢している。リチャード・マニュエルの最後の輝きがこのアルバムをよりスピリチュアルなものにしているんだと思うようになった。'68年の『ビッグ・ピンク』をピークに彼は徐々に下降し暗いトンネルの中へ・・・。有り余る才能を解き放つこともなく。
 '85年の本盤だ。小さなクラブでのピアノの弾き語り。唄もピアノも本当のホンモノだ。ホンモノだからこそ切ないのだ。小さなクラブでエレピを弾く彼を聴き、たまらなく悲しいのだ。「彼に会いたい。彼の歌は繰り返し聴いている。どんなに彼のようになりたいと思っただろう。あれだけのパワーと儚さを表現できたらいいのに。彼こそインスピレーションの源だった」(March,2002, エリック・クラプトン) 
10点

The Band / The Last Waltz
 感慨深いアルバムの再発だ。これは'76年に行われたザ・バンドの解散コンサートをマーティン・スコセッシが映画化しサウンドトラックとして音盤もリリースされた、本盤はそれに当日演奏された未発表曲やリハーサル音源を加えてのリミックス盤。映画も音盤も発表されたのは'78年だったと思う。僕もその頃手に入れて聴きまくったし、映像もその頃に観たはずだ。当時はまだミュージシャンの映像って貴重だった頃で、ザ・バンドはもちろんDr.ジョン、ヴァン・モリソン、ニール・ヤング、ジョニ・ミッチェル、エリック・クラプトン、マディ・ウォーターズ、ボブ・ディラン、こんな連中が唄い演奏する姿を陶然として観たものだった。その後いろんな自伝や研究書で舞台裏が披露され、「その日その日を楽しく歌って暮らせればOKの音楽バカと、明日を見据えた上昇志向の強いひとりの策士」(by萩原健太)と言うような見方でザ・バンドを捉える人達も増えたように思う。たしかにこのアルバムの主役"策士"ロビー・ロバートソンの張り切りよう(はしゃぎぶり)は映画を観るとよくわかるが。久しぶりにこのアルバムを聴いて、やはり凄く感動した。僕にとって「ラスト・ワルツ」はロックの素晴らしさ、ザ・バンドの偉大な姿を見せつけてくれた幸せな思い出だし、いまだに色褪せないロック・ミュージックが充満している宝の箱だ。昨年から今年にかけてボブ・ディラン、ニール・ヤング、Dr.ジョンのライヴに接した。彼等みんな現役感に溢れた素晴らしい音楽を披露してくれた。「ラスト・ワルツ」で終わったものって何だったんだろう?  
10点

Tom Waits / Alice
 前作ほどサウンドがローファイしていなくて、唄がしみじみと心に届いてくる感じ。前作も好きだったけどね。このアルバムは新作なんだけど、楽曲は'92年初演の同名ミュージカルのための書き下ろし作品だそうだ。彼の初期に聴けたようなバラードが復活していて懐かしいというか嬉しい。バックのサウンドが不思議だな。古いヨーロッパの映画音楽のようなくすんだ感じがする。それにしても堂々たるしゃがれ声だな。 9点

オリジナル・ラヴ / ムーンストーン
 前作がけっこうマッチョな仕上がりで、これからいったいどうなるの?だったけど、サウンドはシンプルに歌を前面に押し出してきた。良い曲書くしサウンド創りも巧いんだけど、田島の唄いっぷりに付いて行けない時がある。「悪い種」かっこいいね。「月に静かの海」なんてライダーズの慶一を思いださせる曲だ。大瀧詠一の歌唱を思わせる瞬間もある。そんなことばかり感じてしまう俺って古いやつだね。南佳孝もいた。 9点

島保克 / 島時間
 琉球音楽が流行っているとは思えないが琉球出身のミュージシャンが各方面で大活躍しているのは確かだな。その昔マルフク・レコードなどをシコシコ買い集めていた私も嬉しい。大島保克は石垣島白保村出身の33才らしい。三絃を弾きながら唄うトラディショナルなシンガーって感じだけど古臭ささは感じない。サウンド・プロダクションと関係があるのかな。ムーンライダーズの武川雅寛がヴァイオリン、マンドリン、トランペットを、ブラジリアン・スタイルのギタリスト笹子重治、パーカッションの三沢泉、BEGINの上地等(彼は大島と同じ島出身で同級生)がアコーディオンとピアノ。彼等が演奏するアコースティックなアンサンブルが大島の唄と三絃に見事に溶け合って悠久の時空間へと誘う。「真砂の道」で聴けるさりげないトランペットの調べが心に沁みる。 
10点

Dirty Dozen Brass Band / Medicated Magic
 初めて聴いた'8?年頃とは別のバンドって感じ。マーチング・バンドじゃないね、もう。キーボードやギターが入ってるし、バスドラとスネアが分業だったのがドラムスになってるし、あの凄まじいスーザフォンが懐かしいよ。でも悪くないよこれも。ニューオーリンズのバンドだからね。「ルーラ・オブ・マイ・ハート」をノラ・ジョーンズが唄っていたり、「ジュンコ・パートナー」はオル・ダラがおしゃれにキメてるし、御大DR.ジョンも参加してるしね。悪くはない。ただ昔のDDBBがまた聴きたいな。 8点

山広明 / キャトル
 片山の新作。悪いはずがない!豪放で男臭く人懐こく哀愁も併せ持つ、で根本はラジカル。フリー・ジャズの大河を悠々と泳いできたテナー・マンこそ片山広明だ。今回のメンツは板橋文夫!、井野信義、芳垣安洋。みんないい面構えしてるよ。面構えは音に出る。俺はコレをJAZZと呼ぶ。泣き節に共振している俺がいる。 
10点

Goldie Hawn / Goldie
 コメディエンヌって呼ぶのかな?大好きな女優さんです。ゴールディ・ホーン '72年の作品です。こんなアルバムが出てたのなんてまったく知らなかった。プロデュースにレニー・ワロンカーの名前があったりニック・デカロもいる。当然良質なポップ・アルバムです。バッカルーズの演奏に乗ってのカントリー・タッチの曲もキュートです。8点

大熊亘 / 豚の報い
 同名映画のオリジナルサウンドトラック盤。シカラムータを率いソウルフラワー・ユニオンにも参加していた大熊の作品。演奏はシカラムータを中心としたメンバーで、無国籍風ながら表情豊かな演奏だ。大熊と言えばどうしてもコンポステラを率いた篠田昌巳を想い出す。生向委に参加の後じゃがたら、コンポステラ、東京チンドンなどラジカルな大衆性を追求しながら志半ばで逝ってしまったサックス・プレイヤー。同士だった大熊、関島が篠田と共に創り上げた音楽を継承しているのが嬉しい。 9点

Bonnie Raitt / Silver Lining
 姉御の新作です。もう堂々たる出来映えですね。ルーツに根ざしたストレートなロック・アルバムです。面白かったのは「ヒアー・ミー・ロード」で、アフリカン・タッチですね。南アのマホテラ・クイーンズを思い出した。作者はジンバブエのオリヴァー・ムトゥンジ。良い感じです。キラキラとしたギターもグッドです。 8点

Elvis Costello / When I Was Cruel
 他流試合に精を出していたコステロ久しぶりのロック・アルバム。7〜8年前かな新宿厚生年金会館でコステロを観たんだけど、大きな腹の上にテレキャスターを乗せての熱唱に感動しました。太ってもロック・スピリットは健在でした。彼くらいのキャリアを積めば貫禄が付くのは当たり前、ロックやってもデビュー時のシャープさは無いけれど表情豊かな歌唱力が素晴らしい。「スマイル」唄っちゃうんだからね。 8点

Cassandra Wilson / Belly Of The Sun
 
ジャズの老舗ブルーノートで着実に地歩を固めた感のあるカサンドラ・ウィルソンの新作はザ・バンドの「The Weight」で始まる。自作の他はジェイムズ・テイラー、カルロス・ジョビン、フレッド・マクドゥエル、ボブ・ディラン、ロバート・ジョンソンなどの作品をカバーしている。これまで通りの脱ジャズ路線。やっぱり上品でインテリっぽい感じがしてイマイチ。  7点

Patsy Montana / The Best Of
 おっいきなりヨーデルが!このヨーデルで人気のあったパッツィー・モンタナの'35-40年の録音集。「カウボーイ・ソングとマウンテン・バラッド集」とジャケットにあるけど欧米ではこれで通っちゃうわけね。ギター、ベース、マンドリン、フィドルを中心とした演奏はシンプルかつスウィンギー。歌声からにじみ出る健康的なお色気もスターの条件だったのかな。気持ちいいなあ。 9点

V.A / Evangeline Made〜a tribute to Cajun Music
 「オイラはルイジアナのクレイジー・ダイナマイト・ケイジャン・マン。フィドル弾きゃ町の女がオイラについてくる〜♪」とごく一部で有名なケイジャン・ミュージック。本盤はケイジャン〜ザディゴの有名曲を豪華なゲストと共にトリビュートしようという試み。これは大成功!リチャード&リンダ・トンプソン、ジョン・フォガティ、リンダ・ロンシュタッド、マリア・マッキー、ニック・ロウといったゲストがじつに嬉しい。でも主役はイカしたアコーディオンかな。 
10点

Harpers Bizarre / The Secret Life Of
 '75年頃に借りて聴いたことがあって、その頃はアメリカン・ルーツに根ざしたロックやブルース、サザン・ソウルなんかが好きだったから、本盤の印象は「な〜んか軽くてツマらん」だった。このアルバムを楽しむための知識もゆとりも無かったと今にして思う。これ'68年のリリースだったんだ!ポップで斬新で映像が浮かんでくるようなサウンドだね。'70年代アメリカン・ロックを語るに忘れてはならないバーバンク・サウンド。その立て役者のレニー・ワロンカー、テッド・テンプルマン、ランディ・ニューマンそしてニック・デカロの名前が見える。まあ当時僕だけじゃなかったと思うよ、彼等の高度な洒落心に気付けなかったロック・ファンは。ゴメンねの意味も込めて 
10点

Teenage Fanclub & Jad Fair / Words Of Wisdom & Hope
 もしかして、とちょっと期待の本盤でしたが、まあ期待はずれかな。まあ両者共に愛着や思い入れがあるわけじゃなかったので。  7点

B-52'S / Anthology
 '79年リリースのファースト・アルバムは大好きでけっこうマイ・ブーム的に宅録ネタにして楽しみました。チープなサウンドのギターにオルガン、はすっぱな感じの女性ヴォーカル、不思議ポップな曲調、これらは今聴いても楽しかったね。「Rock Lobster」なんてゴキゲンだもんね。ただ初期に比べて後期に向かうにつれてチープ感が薄れ、斬新さが無くなってきて物足りなかった。1stだけなら10点だけど・・・8点

Buddy & Julie Miller / same
 おっといきなりリチャード・トンプソンの「Keep Your Distance」!ツカミはOKね。エミルー・ハリスのスパイ・ボーイズで注目したバディ・ミラー、今回は奥さんジュリーとの共作。ジュリーの声がけっこうハスッパな声でたじろいだけど、聴いてるうちになれてきた。彼女良い曲書きますね。バディのヴォーカルもギターも渋い。ルーツに根ざした夫婦ロック・アルバムだね。 8点

V.A / Gonna Rock The Blues
 ジャケットにサックス抱えた黒人がいるからサックスがブリブリ吠えるジャンプ〜R&Bのロッキン・インスト集かと思っていたらライトニン・ホプキンス、ジョン・リー・フッカー、ジョー・ヒル・ルイスといった大物からマジック・サム、オーティス・ラッシュといった新鋭などけっこうゴチャまぜ、イキのいいヤツみんな入れちゃえって感じのアルバム。ターヒール・スリムの" Number 9 Train "なんかまるでCCRです。8点

Sam Manning / Vol.2 N.Y1927-30
 名古屋ネットワーク推薦のサム・マニング。トリニダッド生まれのカリプソニアンとそうです。カリプソは好きでたまに聴きますが、彼のようにNYで活躍したヴォードヴィル・マンて感じの人を初めて知りました。たしかにカリプソであるんだけどジャズとしても違和感がない、そんな感じです。故油井正一大先生が「ジャズはラテンの1変種だ」とか述べていたように記憶していますが、この時代の例えばニューオーリンズとカリブ、NYとカリブ、それぞれの音楽が活発に影響し合っている様子がこのアルバムからも感じとれるように思います。 8点

Fairport Convention / Heyday
 英エレクトリック・トラッドの雄フェアポート・コンベンション、本盤は彼等がまだ独自のスタイルを確立する以前の青春編。'68-69年にBBCで録音されたもので、リチャード・トンプソン、サンディ・デニー、イアン・マシューズ、アシュレイ・ハッチングス、サイモン・ニコル、デイヴ・マタックス、デイヴ・スウォブリックなど役者は揃っている。ディラン、ジョニ・ミッチェル、レナード・コーエンなどの曲をカバーしていて、サウンドはアメリカのフォーク・ロックって感じ。混じってデニー作「フォザリンゲイ」が演奏され独自の世界を作っている。RTのギターもすでに曲者ですね。 9点

Nilsson / Greatest Hits
 その昔、ニルソンは英国人だと思ってました。初めて聴いたのが「ウイズアウト・ユー」で、それがバッドフィンガーの曲だったでしょ。それと'70年代の彼はイギリスのミュージシャンをバックにロンドン録音が多かったから英国人と思いこんでた。「エヴリバディズ・トーキン」がフレッド・ニールの曲でニルソンが唄ってたと知ったのは後年のことで、その時に彼が米国人だと知ったような・・。つまり僕にとってのニルソンはその程度の存在だったわけだ。'70年代初期って僕がロックにのめり込んだ時期で、当然バンドに目が行っていたから、ニルソンのような人にまで耳が回らなかったように思う。こうして改めて聴くと、すごく良いんだなあ!特に初期の作品が。素晴らしいメロディ・メーカーにして偉大な歌手だったんですね。「Everybody's Talkin'」は時代を超えた名曲ですね。ニルソンは'94年に52才で亡くなったんですね。 9点

John Hiatt / Crossing Muddy Waters
 仁彦さんがくれた!ダブリ買い?はははは。相変わらずアーシーなロックです。バックはアコースティックなバンド・サウンドで統一、渋いです。本作は2000年の作品。地味ながらベテラン健在です。 8点

V.A / Get Hip Show Case
 4月に紹介した小谷君率いるHot Saxy とリトルファッツ達が所属するレーベルGet Hipの所属アーティスト・オムニバス・アルバム。若い諸君がじつに古臭い音楽をやっているわけだ。僕はこれらのジャグ、アーリー・ジャズ、ジャイヴ、R&Bなんかが好きだから聴いていて楽しい。ただこうしてCDをリリースするからには、ただのアマチュアじゃないんだからコピーを突き抜けたモノが必要だと思う。リトルファッツのアツシのヴォーカルとキャラには将来性を感じるし、Hot Saxy は面白いトコを突いてると思う。8点

前月のGet音盤
 
2002. 1月 2-3月 4月
 2001.1-2月 3-4月 5月 6-7月 8-9月 10-11月 12月
 2000
.
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10-11月 12
 1999.
6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

月下の遊群CONTENTS
 
ロスタイムにご用心  酔んぐしなくちゃ意味ないね
 
While My Guitar Gently Weeps