●2006●

 10月30-31日 晴れ 体調・ふつう

 松之山大棟山美術博物館の「坂口安吾生誕百年記念写真展」に行ってきました。この博物館、もとは松之山の旧家村山家邸宅、所謂豪農の館でして先祖伝来のお宝が展示してあります。そのうえ坂口安吾の姉の嫁ぎ先として安吾も度々訪れた家なのでゆかりの書画も残されています。写真展やお宝も良かったけど、古くて威厳のある旧家の邸宅そのものが好きなんですよ。金田一さんが登場しそうだね(笑)。宇江佐真理『聞き屋与平-江戸夜咄草』と吉田修一『初恋温泉』読了。現代ミステリ3連ちゃんで胃もたれ(笑)なのでサラっとした読み物。『聞き屋与平』は良い味出てました。与平のかみさんと3人の息子の嫁さんが揃ってキリっとして魅力的。続編はおかみさん主役で『聞き屋おせき』でお願いします。与平の老いていく日常がせつない小説でもありました。『初恋温泉』も 胃もたれなしの短編集。もすこし食べたいってとこでお膳を片付けられた、けど美味しかった、てな感じでしたね。
HOWLIN' WOLF『The Complete Recordings 1951-1969』
 チェス7枚組コンプリートBOXのvol.3と4。'53-'58年。舞台はウインディー・シティー、シカゴに移りました。そして最愛の相棒ヒューバート・サムリンのギターが登場。エリック・クラプトンがお手本にしたというブルース・ギターです。シャープなギターがウルフのダミ声に合ってるんだよなあ。つづく。


 10月28-29日 晴れ 体調・ふつう

 大沢在昌『狼花-新宿鮫\』読了。この大沢には疲れました〜。説明が多すぎて最後まで物語りに乗れなかった。魅力在る登場人物を配置しながら魅力満開まで行けないのは、いちいち長い説明が入るからと思う。苦悩する鮫島。国家・組織・権力に対し個人はいかに対峙できるのか。大きく重く深いテーマに挑んだのだろうか?苦悩する大沢在昌...なのか?。
宮沢昭『いわな』
 名演だなあとつくづく思う。晴れ晴れと高らかに、これがジャズだといってるような清々しさがある。'69年の録音。酸いも甘いもかみ分けた円熟のテナー・マン宮沢昭が新進気鋭の佐藤允彦(p)、富樫雅彦(ds)そして荒川康男(b)、瀬上養之助(perc)によるクインテットで創り上げた素晴らしいジャズ。様々なパーカッションの音色を巧に配置し、視覚的で高揚感がありしかも風通しが良い。力強く艶のある宮沢のサックスはジャズを色濃く感じさせつつ「いわな」の曲構成の新しさは今聴いても古びていないというか新鮮。そして佐藤と富樫のプレイにはジャズに囚われず新しい音楽に向かう挑戦者の意気込み(クールなんだけどね)が感じられる。今日の天気のように晴れやかな気分です。


 10月27日 曇り/晴れ 体調・ふつう

 東野圭吾『赤い指』読了。ヒューマン・ドラマだなあ。深層心理まで潜りこんでミステリーを組み立てる巧さ鮮やかさは相変わらず。チリンという鈴の鳴る音に東野圭吾を感じます。
Sonny Boy Williamson『KING BISCUIT TIME』
 メンフィス及び南部バンド・ブルースに大きな影響を及ぼしたのが、アレック(ライス)・ミラーAKAサニー・ボーイ・ウイリアムスンとロバート・Jr・ロックウッドが'41年からアーカンソー州ヘレナのKFFAラジオ局で開始した番組「キング・ビスケット・タイム」。キング・ビスケット・ボーイズによるゴキゲンなバンド・サウンドは南部一帯で人気を博し、特にサニー・ボーイのハープとロックウッドのギターは大きな影響力を持ち、後のシカゴ・ブルースの原型となったらしい。このアルバムはロックウッドが抜けた後の'51年録音でサニー・ボーイのデビュー・アルバム。今聴いているCDはARHOOLIEの'89年再発盤でこのパーソネルにも名前はないけど、このセッション時のギタリストのひとりはエルモア・ジェイムスだそうだ。スライド弾きじゃないエルモアのプレイだけど、じつに達者なロッキン・ギターです(どっちかわからないんだけどw)。このアルバムで異色なのはクリフ・ギヴンズのベース。これヴォーカル・ベースなんですね。ゴスペル・カルテットのベース担当だけに流石の口まね。アルバムのラストはエルモア・ジェイムス初録音となる御存知大名物「ダスト・マイ・ブルーム」。後のエルモアに比べるといなたい感じだけど、これはこれで良いんです。いなせなサニー・ボーイ、この後のチェス録音がまた凄いんだよね。


 10月25-26日 雨/曇り 体調・ふつう

 居間にこたつ出現し嗚呼冬近し。永瀬隼介『踊る天使』読了。業火を背負った二人の男をめぐる新宿歌舞伎町ミステリー。あの歌舞伎町雑居ビル火災を物語に取り込み、火災現場のリアルな描写は読んでいるこっちが熱苦しくなる程。手紙文による回想で事件の背景を語り、その構成の巧さに唸った。ちなみにこれを読むとサン=テグジュペリの『夜間飛行』を読みたくなります。えっ!?(笑)
V.A.『the blues COME DOWN FROM MEMPHIS』
 メンフィス・サン・レコーズのブルース・オムニバス盤です。ハウリン・ウルフを聴いたのでちょっと寄り道。50年代初めにメンフィス・レコーディング・サービスという名でサム・フィリップスによって設立され、一般的にはプレスリーを世に出したレーベルとして有名。そしてジョニー・キャッシュ、ジェリー・リー・ルイス、ロイ・オービソン、カール・パーキンズらを輩出しロカビリー旋風を巻き起こしたんだよね。なのにサン・レコーズはメジャー・レーベルにはなれなかった。商売は難しいねえ。サムが偉いのは白人音楽だけでなく黒人音楽にも興味をもちメンフィス及び周辺で盛んだったブルース&R&Bを録音しリリースしたこと。おかげでこうして'50年代の熱いメンフィス・ロッキン・ブルースを聴くことができるんだからね。ワンマン・バンドのドクター・ロスとジョー・ヒル・ルイス。パット・ヘアのギターが凄い(悶絶ギター!)ジェイムズ・コットンの「コットン・クロップ・ブルース」。ウイリー・ニックスにリトル・ミルトンにルーファス・トーマス、そして「フィーリン・グッド」が大ヒットのジュニア・パーカー。パーカーは「ミステリー・トレイン」も有名ですね。'50年代のサン・レコーズを聴いてると、ヒルビリーやR&Bやブルースといった南部の白人音楽と黒人音楽が巧い具合に影響し会い、新しい音楽の胎動が聴こえてる、そんな感じがするんだよね。


 10月24日 雨/曇り 体調・ふつう

 佐藤多佳子『一瞬の風になれ 1.イチニツイテ』読了。大学生の箱根駅伝に続いて今度は高校陸上部の物語。佐藤さんは作品毎に趣向を変えて楽しませてくれる大好きな作家です。続編を早く読みたいねえ。
HOWLIN' WOLF『The Complete Recordings 1951-1969』
 前日に続いてチェス7枚組コンプリートBOXのvol.2。これも'51-'52年のメンフィス録音。ハウリン・ウルフことチェスター・バーネットは顔がやたらでかい。でかいのは身体もそうで、190cmで120kg、ついでに足もでかかった。1910年に生まれ、故郷のミシシッピーを後にしてアーカンソーではサニー・ボーイ2世とロバート・ジョンソンに出会いトリオで南部を流したとか。そして'48年ウエスト・メンフィスに進出。荒くれ酒場で荒くれブルースを歌っていたウルフに目を付けたサム・フィリップスがせっせとレコーディング。ハウリン・ウルフ遅咲きデビューとなったわけです。


 10月23日 晴れ 体調・ふつう

 三浦しをん『風が強く吹いている』読了。物語の中の一年間にこっちもきちんと付き添った感じで、読み終わりには、一年前は...とか回想したり(笑)。シロウト同然の大学生達が箱根駅伝に挑むという、ありえないのかもしれないお話し。メンバー10人、ひとりひとりの思いを綴ることで、爽やかな青春小説となっておりました。
HOWLIN' WOLF『The Complete Recordings 1951-1969』
 ブルースをあまり聴かない人は、ブルースは3コードで12小節で誰を聴いても同じだと思ってるんじゃないかな。でもね、たとえばエルモア・ジェイムス、マディ・ウォータース、そしてこのハウリン・ウルフなんかを聴くと、それぞれがまったく別の音楽に聴こえるんだよね。強烈な個性を発散してるブルース・マンて多いね。だから深みにはまっちゃう(笑)このウルフはチェスの7枚組コンプリートBOXのvol.1。チェスのコンプリートといってもこの1枚目は'51-'52年メンフィス録音。メンフィス録音と言えばサム・フィリップスとアイク・ターナーの仕事。アイク・ターナーのピアノ、ウィリー・ジョンソンのギター、ウィリー・スティールのドラム、そしてウルフの歌とハープ。このバンド・サウンド、超ワイルドでかっこいいよ。ジョンソンの" メンフィス・アグレッシヴ・凶暴ギター" がウルフのド迫力ダミ声ヴォーカルに絡む様こそ圧巻!。


 10月21-22日 曇り/晴れ 体調・ふつう

 三浦しをん『風が強く吹いている』も後半に。ついに箱根駅伝がスタートしたよ。え〜結末はどうなるんだ?今日はお祖母ちゃん連れて小学校の文化祭(今は文化祭という名称じゃないんだよね)。孫娘の歌い踊る姿に涙ぐむお祖母ちゃん。次は初開催の「卯の木文化祭」。ムラの文化祭です。おらムラんしょはたいしたもんだと感心しきり。
LEWIS FUREY『LEWIS FUREY』
 これは衝撃的音盤だったな。'79年に日本盤が出た時に初めて聴いたんだ。噂は耳にしていたんだよね、ムーンライダーズ周辺から聞こえて来てたから。「ハスラーズ・タンゴ」が流れてきた時、一発でもっていかれたね。ゾクっとした。初めての世界だと感じた。優美で甘美で退廃的で。すっかり感動しちゃって、周りの人たちに教えたくてしょうがなくなって、ルイス・フューレイのアルバムは凄いよってね。でもね、歌詞カード読んだら...ちちょっとまてよ、これまずいかも、と考え直した。あまりに淫靡で背徳的な歌世界なんだよね。だからといって音楽が汚れているなんてことはまったくない。大都市の暗部から目を背けない態度が物語性を得て芸術に昇華しちゃった感じ(意味不明?おおげさw)。久しぶりの『ルイス・フューレイ』はやはり大都市の哀歌=エレジーのように聴こえる。ルイス・フューレイは'49年カナダ生まれ。このデビュー・アルバムは'75年N.Y.録音でプロデューサーはレナード・コーエンも手がけたジョン・リソワーでした。


 10月20日 曇り/雨 体調・ふつう

 宮部みゆき『名もなき毒』読了。読み始めてあれっこの人達..以前会ったことがあるぞ?そうか『誰か』の続編なんだなこれは。探偵みたいなことをしているだけのサラリーマン杉山三郎。冴えてるのか冴えてないのか判らないこの三郎氏あっての物語。むかついて殴りたくなる毒女原田いずみのような悪役は宮部さんの得意とするところ。俺的には『ぼんくら』『日暮らし』の続編が読みたいところです。
JOHN FOGERTY
   『THE LONG ROAD HOME - IN CONCERT』DVD
 2005年のジョン・フォガティ!若い!かっこいい!グレート!ヒット曲のオン・パレード。曲ごとにギターを取り替え、歌い、そしてトィワンギーなソロをとる。まったく衰えなしですよ。ジョン・フォガティは'70年前後のロック界で一世を風靡したバンドCCRの中心人物ですが、日本では忘れられてる感もありますね。しか〜しアメリカではいまだに大スター。シンプルかつストレートなロック・サウンドゆえかまったく古びていないし、ほんと瑞々しいジョンのロック。そんな中、反戦・反ブッシュを静かに歌う「Deja Vu(All Over Again)」そしてそれに続く「雨を見たかい」。〜晴れた日に降る雨を見たかい...と歌われるこの曲は、ベトナム戦争で大量に使われたナパーム弾の事を歌ったもので、当時アメリカでは一時放送禁止歌だった。こうした歌を誠実に歌うジョンの姿、これもアメリカなんだと思う。ともあれ「フール・ストップ・ザ・レイン」に胸がきゅんとなり、「ルッキング・アウト・マイ・バック・ドア」「プラウド・メアリー」をうきうき一緒に口ずさむ。ジョン・フォガティは素晴らしい!


 10月19日 晴れ 体調・ふつう

 朝が寒いもんだから3枚くらい重ね着していると、どんどん暖かくなってきてお昼にはシャツ1枚でOK。これでまた夜になればコタツが欲しいなと思ったりするんだよね。
シカラムータ『ゴースト・サーカス』
 盤友栄一氏が置いていったやつです。ジャケット見たらどうも見覚えが...(笑)俺も持ってました。でもせっかくだから聴いてます。大熊もシカラムータも大好きだから。小所帯の渋さ知らズ又はトンガったコンポステラってのが俺のシカラムータに対するイメージ。どっちもいいでしょ?それ+パンクな心意気ね。つまりは素晴らしいってこと。大熊ワタル(cl.etc)、川口義之(as.bs)、太田恵資(vl)、桜井芳樹(g.etc)、坂本弘道(cello.etc)、関島岳郎(tuba.etc)、吉田達也(ds.perc)というメンバーは、他のグループ活動や多くのセッションに引っ張りだこの腕利きで働き者な面々。カザルスの名演で名高い「鳥の歌」やビクトル・ハラの「平和に生きる権利」などをやるところがいかにも反骨の大熊らしくて、そこが嬉しいところだ。


 10月18日 晴れ 体調・ふつう

 浅田次郎『地下鉄(メトロ)に乗って』読了。映画見る前に読んでしまえ、と駆け込み読書(笑)。父と息子の葛藤劇なんですね。その仕掛けに地下鉄そしてタイムスリップ。俺も若い頃は考えたことなかったけど、この頃父親にどんな青春があったのか、どんなヤツだったのか、きっと俺の知らない青年の顔があったはず、とか想いをはせる事がある。知らないのに懐かしいのは何故なんだろと思ったり。それはともかくこの物語、みち子が可哀想すぎるよ。
ジャンクボックス『フラグメント』
 今年の何月頃か聴いた音盤だけど、どんなだったか忘れてるのでまた聴いてます。ジャンクボックスはピアノの藤井郷子とトランペットの田村夏樹とパーカッションのジョン・ホーレンベックによるトリオ。音によるスケッチであり、こてこての厚塗りであり、激写であり、つまりモチーフを音でイメージする音楽なのかな。ヒキダシの多いこのトリオだからできる演奏なんですね。田村のトランペットにアート・アンサンブル・オブ・シカゴの故レスター・ボウイを想い起こしたんだけど、だからかなこのアルバムにも笑いがあっても良かったと思う。泣き笑いとかね。田村夏樹はこうした感情表現が巧いプレイヤーだと思ってるし。


 10月17日 晴れ 体調・ふつう

 『いけちゃんとぼく』は西原理恵子初めての絵本らしい。笑わせて、油断させといて、そして愛しい気持ちがストンと心の底に落ちてくる。♪単純に 簡単に 唐突に あっけなく〜愛を感じるかもしれない〜♪ ってふちがみとふなとさんの「お店やさん」みたいだね。
渋さ知らズ『渋全』
 盤友栄一氏持ち込みの1枚は渋さのメジャー進出盤でしかもベスト盤のようです。お馴染みの曲も数曲ありますね。メジャーへの挨拶がわりなのか聴きやすい曲と構成です。何度か渋さのライヴを経験しちゃったもんだから、ただCDで聴くってのに物足りなさを感じます。乳房知らズのおねえさんダンサーズもいないしね(笑)もちろん渋さ知らズは大好きなんですが。


 10月16日 雨/曇り/晴れ 体調・ふつう

 川端裕人『銀河のワールドカップ』読了。日本の小学校6年生少年少女8人が、なんとレアル・マドリッドの主力8人とミニ・サッカーで戦うという物語。ありえない設定なのにウソ臭さを感じさせない面白さ!サッカーへの愛が伝わってきました。嬉しかった!
MUDDY WATERS『The Complete 1947-1967』
 もうちょっとマディ・ウォーターズ。コンプリート盤もこれが8枚目。'64〜'67年のマディです。これはCHESS録音のコンプリートBOXなんだけど、この4年間でこれ1枚ってのは録音曲数が少ないなあ。ブルースが商売としてキビシクなってるんだよね。この頃かな、ストーンズがアメリカ公演時に憧れのチェス・スタジオを訪れて、自分達が大好きなチェス専属ブルース・マンについて尋ねたんだってね。その時にスタジオの壁塗りをしていたおじさんがマディだったという話しがあるけど(確かではないw)。マディ程の大物といえど黒人ブルースマンの置かれた立場とはこんな風だったのかとため息が出るね。この時代、マディもR&B感覚を全面に出してやってる感じで、その歌声は相変わらず素晴らしいけど、時はモータウン・ソウルにビートルズ〜ロックの時代に入ってたんですね。


 10月15日 晴れ 体調・ふつう

 昨日は二日酔い+寝不足で辛かった。なので昨夜は休肝日。本日は朝から快調です。早朝6時から沿道のゴミ拾いボランティア、そして神社境内でPTA仕事。三浦しをん『まほろ駅前多田便利軒』読了。面白かった。TVドラマ向きな小説だね。主役脇役ともにキャラ立ちいいから。主役コンビにイケメン使えるからほんとドラマになるかも。行天役はオダギリジョーがいいな。
MUDDY WATERS『The Complete 1947-1967』
 マディ・ウォーターズのコンプリート盤の続きでこれが7枚目。'63年のマディです。アルバム後半は『Folk Singer』よりの収録です。この時代のフォーク・リヴァイバルが影響しているのか、マディ御大がアコギを弾きそしてバディ・ガイまでもアコギを弾き、曲によりコンバスの ウィリー・ディクソンとドラムのクリフトン・ジェイムスが付き合っています。所謂アンプラグドのマディ。シブイっちゃあシブイけど、なんかワザとらしい感じ。マディの歌の巧さは相変わらずですがねえ。前半のオーティス・スパン、ルーサー・タッカー、ジェイムズ・コットン達によるセッションは勿論最高です。


 10月12-13日 晴れ 体調・ふつう

 昨日も今日も天気が良くて暖かい。なのに店番しかすることがない!もったいないなあと思う。
SIGHTS『EL SUR』
 船戸さんが在籍したジャズ・トリオ、サイツの'90年録音ファースト・アルバムです。リーダーはトロンボーンの大原裕。そしてドラムス&パーカッションが芳垣安洋でベースが船戸博史。溢れる躍動感と野生の匂い、人懐こいシンプルなメロディー。フリーでもフォー・ビートでもなく、しかし凄くジャズ臭い。トロンボーンがワン・ホーンのバンドって珍しい気がするんだけど、独特な音色だよね。風の音に近いというか楽器っぽくない音だと思う。不器用なくせに感情過多な奴って感じがするんだよね。大原のトロンボーンはまさにそんな感じ。ブリブリっと大胆で豪快だけど悲しみがすぐ裏側に張り付いてる。目下超売れっ子ドラマー芳垣のプレイはこの頃からフレキシブルで色彩感がある。トリオのサウンドに広がりを与えているように感じる。船戸さんのベースは雄弁です。生き生きと躍動しています。ちなみにライナーのらイヴ写真は渕上純子さんでした。


 10月10-11日 晴れ/曇り 体調・ふつう

 昨日は天晴れな秋晴れの中、小学校のマラソン大会でした。娘は2キロ・コースを一生懸命走りました。諸田玲子『木もれ陽の街で』読了。『あくじゃれ』の諸田さん、本作の舞台は戦後27年頃の東京西荻。良家のウブなお嬢様の恋愛話し。与謝野晶子の歌を巧に用い、古風で上品な趣のある物語。現代でもなく時代劇でもなく、ちょっと昔の東京と日本人を描いた物語に好感がもてました。
DELANEY & BONNIE『home』
 大好きなデラニー&ボニーのデビュー・アルバムです。LP盤、CD盤、そしてこの紙ジャケ+ボーナス・トラック付きCD盤で3代目ですね。スワンプ・ロックとして語られることの多いデラボニですが、この'69年アルバムは堂々たるサザン・ソウル・アルバムです。レーベルはスタックス、バックはMG'Sとメンフィス・ホーンズ、バック・コーラスにはエディ・フロイド、アイザック・ヘイズ、ウイリアム・ベルというスタックスが誇るシンガー&ソングライター達という豪華さ(まあ豪華ではあるけど、スタックスのハウス・レコーディングってことですね)。プロデュースはMG'Sのダック・ダンとドン・ニックス。ボニーは白人でありながらアイク&ティナ・ターナーのコーラス隊アイケッツ出身のソウル・サーキット育ち。デラニーはミシシッピ生まれで黒人ブルース・マンに囲まれて育った。そんなこんなだから、このアルバムで聴かれるのは素晴らしい本物のソウル・ミュージックなんですね。ボーナス・トラックの1曲「ア・ロング・ロード・ア・ヘッド」だけどうもテイストが違うんだよね。後のデラボニ風スワンプ・ロックになってる。スライド・ギターが入ってるけど誰なんだろ?スティーブ・クロッパーとは思えないんだけど。'69年にオーヴァー・ダブしたとあるから新たな誰か(デュエイン!?)が弾いてるのかな。颯爽としたゴキゲンなナンバーです。ボーナス・トラックもみんな良い曲揃いで嬉しいです!


 10月9日 晴れ 体調・ふつう

 秋晴れです。安倍首相の中韓訪問と、それに合わせたかのような北朝鮮の核実験。やっかいな隣人との付き合いには隣組との連携が大切。若さの安倍さん、大人の外交を期待してますよ。
武蔵野タンポポ団『1972 春一番』より
 10枚組BOXの10枚目。高田渡、シバ、若林純夫、村上律、中川イサト、岩井宏、村瀬雅美というメンバーによるタンポポ団。吉祥寺の" ぐぁらん堂 " 常連により結成されたと思う。気楽な仲間達とジャグ・バンド風に盛り上がろうってノリが伝わってきます。シバの「もしも」「淋しい気持ちで」、高田渡の「長屋の路地に」、若林純夫の「朝」やサンフランシスコ・ベイ・ブルースの替え歌「吉祥寺ブルース」これも替え歌「ミッドナイト・スペシャル」を唄い、この年春一番の流行歌「あしたはきっと」もやっています。みんな似た感じ。こうゆうのは一緒に参加して唄い演奏したり、また目の前で楽しめたら面白いと思うけど、CDでずっと聴いてるとちょっと飽きるね。演奏的にもっと工夫があった方が良かったかな。いとうたかお作の「あしたはきっと」は本人を含め3回も唄われていて、この時代の春一番の空気にぴったりの曲だったんだろうね。


 10月8日 雨/曇り 体調・ふつう

 天気は大荒れ。町内駅伝大会なのにね。風雨の中をランナー達が駆けて行きました。がんばれ〜!
高田渡、加川良、岩井宏、遠藤賢司『1972 春一番』より
 10枚組BOXの9枚目。千両役者揃い踏み。岩井宏を憶えている人は少ないと思うけど俺は「かみしばい」が好きだった。ロングネック・バンジョー弾きでね。加川良の「下宿屋」って歌は加川が京都に住んでいた高田渡の下宿を訪ねた時の歌で、歌詞の中に〜僕が岩井さんやシバくんと会えたのも〜てのがあります。その岩井さんです。高田渡はほんとに良い味をもった歌手だよね。ここでは「自転車に乗って」と「系図」を歌ってる。ジャンルを越えた" 高田渡の歌 " なんだよね。加川良が1曲ってのは少なすぎだなあ。この時代の加川の歌をもっと聴きたいよね。遠藤賢司は4曲も入ってる。「寝図美よこれが太平洋だ」「結婚しようよ」by拓郎「カレーライス」「満足できるかな」。バラエティーに富んでいるのにこれが自然体。遠藤賢司の世界も屹立してるよなあ。日本音楽界に確固たるエンケン・ブランドを確立しちゃったもんね。


 10月6-7日 雨 体調・ふつう

 荻原浩『僕たちの戦争』読了。巧いな〜読ませるな〜のパラレル・ワールド物。ラストが非常にもったいぶってる。オチがはっきりしないんだもんね。こっちが勝手に想像するしかない結末。まあこれもいいかな。
GEOFF & MARIA MULDAUR『POTTERY PIE』
 『ジョー・ボイドの仕事』の「ブラジル」を聴いたから、さすればこれを聴かねばと思いまして。'69年作の名盤ですね。60年代フォーク・リヴァイバルの最中、ルヴァイヴァル・ジャグ・バンドの両雄と言えばイーヴン・ダズン・ジャグ・バンド(ジョン・セバスチャン、スティファン・グロスマン、デイヴィッド・グリスマン、スティーヴ・カッツそしてマリアがいた。凄いメンツ!)とジム・クエスキン・ジャグ・バンド(ジムとジェフとビル・キース、メル・ライマン、フリッツ・リッチモンドとこちらも凄い!)。マリアがジェフに惚れてクエスキン・ジャグ・バンドに合流、バンド解散後にデュオとして再スタート、その第一作がこのアルバムです。上記両バンドは主にボストン-ケンブリッジの学生バンドとして出発(たっだと思う?)した、いわばインテリ・バンド。学究肌でありまたエンタテイメントをも併せ持っておりました。それはジェフ&マリアも然りで、古いフォークソングはもとより、アーリー・ジャズやポピュラー・ソング、R&Bにブルースに、とにかく古い音楽ならなんでもござれ。そんな彼等のジャグ・バンドの頃より一皮剥けた音楽的成熟がここで聴かれるんですね。俺的に美味しいのは何と言ってもエイモス・ギャレットのギター。「ジョージア・オン・マイ・マインド」!すでにこの頃から独創的なプレイです。


 10月5日 曇り 体調・ふつう

 オシム・ジャパンのメンバーと安倍内閣のメンバーって似たとこがあると気付いた。新鮮なんだけど頼りない感じ。まだ評価するには早いかな。でもサッカーはともかく、政治にはそんなに甘いこと言ってらんないよね。田舎は寂れる一方なんだから。
V.A.『white bicycles ・making music in the 1960s・
                 the Joe Boyd story』
 邦題『ジョー・ボイドの仕事(1966-1971』。この中で一番メジャーな存在は最初期のピンク・フロイドとソフト・マシーンの各1曲を除けばフエアポート・コンヴェンションだと思うけど、フェアポートにしたって大メジャーってわけじゃないから、つまりここのあるのはけっこうマニアックな音楽ですね。ニック・ドレイクにしたって当時そんなに騒がれたわけじゃないし。アルバム後半の曲に漂うジャズ・センスって今聴くとおっ凄いって思うけど、ロックが一番沸騰していた'69年頃にはちょっとクール過ぎたんだよねきっと。ジョン&ビヴァリー・マーティンとかニュー・ナディールは初めて耳にする名前と音楽で、このシャレたジャズ風味はけっこうイケます。このジャズ風味はボイドの趣味と一致していたんですね。ライナーにボイド自身による解説があり、「...エリック・アンダーセンのような取るに足らないアメリカのソングライターに対する彼等(フェアポートのメンバー達)の熱狂も共有できるものでなかった。...私達は皆で座ってLP(ジャズでしょうね)をかけていた。彼等は私のジャズへの熱狂を共有してくれた。...」とありました。面白いね。さあて日も暮れてきた。ニコの「Afraido」ではジョン・ケイルがピアノとヴィオラを演奏している。もの悲しいね。続いてドレイクの「Way to blue」でより憂鬱な気分に(笑)。でもご安心あれ、ラストは我等がジェフ&マリアの「Brazil」だよ!エイモス・ギャレットのギターに導かれて青空に吹き渡る口笛のメロディー、そして朗々たるクルーナー・ヴォーカル。どこかインチキ臭いのはご愛敬。最高の趣味趣味ミュージックですよ。


 10月4日 晴れ 体調・ふつう

 万城目学『鴨川ホルモー』読了。なんじゃこりゃ〜な怪作...なのか〜?は、でした、怪作(笑)。でも真っ当な青春小説だったりします。これ読んでると、ああ俺も京都で学生時代を送りたかったという想いに駆られました。青春は二度と来ない。残念!
V.A.『white bicycles ・making music in the 1960s・
                 the Joe Boyd story』
 邦題『ジョー・ボイドの仕事(1966-1971』です。素晴らしい企画物です。ジョー・ボイドのお仕事は大好きです。初めて聴いたのはジェフ&マリア・マルダーのアルバムでした。ジョー・ボイドはイギリスの音楽界でプロデューサーとして活躍したアメリカ人。霞がかったようなブリティッシュ・フォーク・ロックの名盤を数多く世に送り出しました。でもトップに登場するのはE・クラプトン&パワーハウスの「クロスロード」。ヴォーカルはスティーヴィー・ウインウッド!懐かしいなあ。後はボイドの名を知らしめたフェアポート・コンヴェンション、ニック・ドレイク、インクレディブル・ストリング・バンドなどが収録されています。奥深く盛りだくさんな内容なので明日につづく。


 10月3日 曇り/晴れ 体調・ふつう

 『鴨川ホルモー』読んでます。なんじゃこりゃ〜な怪作...なのか〜?
ハンバート ハンバート『道はつづく』
 2曲目「林檎」はCCRの「光あるかぎり」に似ているね。さすがジョン・フォガティーの歌をこの世で一番かっこいいと言う佐藤良成だ。ジョン・フォガティ=CCRの男臭い骨っぽい音楽に影響された曲をまったくタイプの違う女性シンガーに歌わせる。まったく違和感がない。不思議な人達だ。ブリティッシュ・トラッドの雰囲気はあるんだよね。飾り気のない清楚な歌声にアコースティックな演奏を聴いてるとね。素晴らしいジャケット写真からも伺えるアパラチアンな曲も楽しい。佐藤がリード・ヴォーカルをとる「おかえりなさい」には'70年代の関西フォークの香りがして、それ風なハーモニカ(佐野さんが吹いてる!)も入っているし。面白い人達だなあ。感心しきり(笑)。


 10月2日 雨/曇り 体調・ふつう

 マイクル・コリータ『さよならを告げた夜』読了。主人公はクリーヴランドの私立探偵。相棒がいてパートナーの女性がいて、大富豪がいてマフィアのボスがいて、そして魅惑的な女性がいて。いかにもハメット、チャンドラーの後継者である。まだ20代の若い後継者。だからか、どこか爽やか。ワイズ・クラックが少なく進行がスピーディー。とても面白かった。探偵リンカーン・ペリーの物語、第二作も早く読みたい。
ハンバート ハンバート『道はつづく』
 友部さんとライブで共演したという男女デュオ、ハンバート ハンバートの新作。MM誌によれば佐藤良成はジョン・フォガティーと友部正人が好きだという。もうこれだけで好人物だとわかる!ハデな曲が無いかわりに聴き返す度にそれぞれの曲の味わいが増してくる。良い曲揃いだ。淡い色合いの音楽ながら拘りの強さも感じさせる。素直というか素朴というか佐野遊穂の歌声を魅力的に聴かせる佐藤の歌作りの巧さが渋く光る。つづく。


 10月1日 曇り 体調・ふつう

 10月になりました。冬が足音がどこからかに聞こえるような...。気のせいか?それとも恐怖心?まあその前に食欲の秋、読書の秋、芸術の秋、新酒の秋を存分に楽しんでおこう。
矢野顕子『ごはんができたよ』
 前日のつづくをとりあえず変更。食欲の秋は『ごはんができたよ』からスタート。このジャケット見るのはすっごい久しぶり。天真爛漫な矢野さんの笑顔にたしかに食欲も湧きますねえ。♪欲しいものはたくさんあるの〜で始まるこのアルバム、矢野さんを熱心に聴いてた頃の大好きなアルバムです。そしてリリースが'80年ということで、バックはYMO。ギターの大村憲司と矢野顕子が参加したYMOのワールド・ツアーってのがありましたね。矢野さんの音楽は包容力の豊かさ感じさせます。シンプルでやさしい言葉には豊かな奥行きが感じられ、人懐こいメロディーには来る者は拒まず(笑)の矢野さんの器量の大きさが感じられます。「ごはんができたよ」みたいな歌を大人達に聴かせてあげられるのは矢野顕子しかいないものね。「また会おね」にはエヴァーグリーンな輝きがあるね。10月のトップバッターは10割打者だった(笑)。


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月下の遊群CONTENTS
 
ロスタイムにご用心  酔んぐしなくちゃ意味ないね While My Guitar Gently Weeps