●2008●

 10月31日 晴れ/曇り  体調・普通  アマゾン.com 自粛中!

 松本清張『小説日本芸譚』読了。日本の古い美術家達を小説風に書いてみては?とすすめられとりかかってみたら、「芸術家は存在しても、人間の所在がわからないのである。当人が芸術に被光されて、見えなくなっているのだ。芸術が人間の上にハレーションを起こしている。」もとより評伝を書くつもりはなく彼等の復元を試みたのでもなく、勝手な解釈による歴史小説と受け取っていただきたい、とある。運慶、世阿弥、千利休、雪舟、古田織部、岩佐又兵衛、小堀遠州、光悦、写楽、止利仏師の各人に短編小説として光があたる。強大なエゴや底深い嫉妬など芸術家達の内面がリアルだ。
矢野顕子『akiko』
 まずはとりあえず「変わるし」がいいね。♪〜 目にみえるもの みんな変わるし 涙もわすれる 欲しがるものは みんな変わるし 笑って見送る 〜 だってね〜(笑) つづく


 10月29日 雨  体調・普通  アマゾン.com 自粛中!

 松本大洋『竹光侍 五』読了。そして『鉄コン筋クリート』アイズナー賞受賞おめでとう!アイズナー賞とはアメリカの " 漫画のアカデミー賞 " と称される名誉ある賞なのです。『鉄コン..』はマンガ的にキラッと鋭い絵だったけど、この『竹光侍』の絵はさらに進化してマンガを飛び出してるかもしれない、と思うのだ。いやはや松本大洋は凄いやつだ!
竹内まりや『Expressions 』
 '81年の「僕の街へ」は結婚を決意し活動休止も決めていた時に作った詞とあるなあ(ブックレットを読みながら..)。♪〜華やかな暮らしに さよなら告げたら 本当の空の色が 見えてきたよ〜 と歌っていますねえ。芸能界のポップ・アイドルだった竹内まりやをここでお終いにして、そして'84年「もう一度」で鮮やかに帰ってきたのだった。アルバム『VARIETY』の1曲目として鮮烈に意識した。俺の竹内まりやはこの「もう一度」から始まってるんだよね。以降竹内まりやは別腹組(笑)として俺の中で君臨しているのでした。


 10月27-28日 雨/曇り/雨/曇り  体調・普通  アマゾン.com 自粛中!

 桜庭一樹『荒野』読了。山野内荒野(やまのうちこうや)十二歳。大人、以前。〜 で物語はスタート。彼女の中一入学式から始まります。そしてラストは...十六歳。時は、流れた。〜 です。女の子の成長物語です。とてもこまやかです。思春期の彼女だから感情の波もはげしかったりするけど、さりげなくユーモラスな雰囲気が漂う物語なのでまろやかな読み心地です。というか、うちの娘も来年中一なので、物語の荒野を応援する気持ちで読んでしまいました。
竹内まりや『Expressions 』
 今この時も日本中の様々な場所で聴かれていることでしょうね、このデビュー30周年を記念した3枚組ベスト・アルバム。まりやさんについてはこの日記でもずっと好き好きとミーハーぶりを発揮し今更誉め言葉もないくらいですが、このアルバムを眺めながら日本音楽界の堂々たる大河となった竹内まりやさんをあらためて眩しく感じます。
 「新し過ぎず、古過ぎず、時の試練に耐える歌」と相棒山下達郎が話しているとおり、まりやさんの歌は熾火ような温かさでいつもいつまでもそばにいてくれることでしょう。


 10月24-25日 雨/曇り  体調・普通  アマゾン.com 自粛中!

 北方謙三『楊令伝 六』読了。今回はスリリング&スペクタクルな戦いはないけど、いくつかの印象的なドラマがあった。公孫勝と候真、扈三娘と聞煥章、そしてなんと童貫と王進。成長あり凄絶あり清冽な老いがあり、そしてそれらの背景に親子の在り方への思いがあり。
渡辺勝、オクノ修、田中亜矢、関島岳郎、中尾勘二、大工哲弘、船戸博史 etc.
『Our Aurasian Things ! 』
 独自路線のインディーズ・レーベルとして異彩を放つオフ・ノートの初オムニバス盤。篠田昌巳&コンポステラ人脈周辺の音楽でずいぶんとお世話になっているレーベルです。シンガー・ソングライターとしてはオクノ修、渡辺勝、上野茂都、大工哲弘などアノ感じの人達を擁し、インスト関係ではコンポステラを始めジャズでもロックでも民族音楽でもない、ちょっとアヴァンギャルドで庶民的な音楽を広く展開していたオフ・ノート。音楽に対して真摯な姿勢を崩さず、ゆえに台所は火の車なオフ・ノート。このレーベル・オムニバス盤が起死回生のものとなれば幸いです。


 10月23日 雨/曇り/晴れ  体調・普通  アマゾン.com 自粛中!

 柳広司『ジョーカー・ゲーム』読了。昭和12年、帝国陸軍内に誕生したD機関と呼ばれるスパイ養成学校の「魔王」結城中佐とスパイ達の活躍物語。軍事謀略小説かと思い読み始めたけどこれがびっくり、スタイリッシュな新手のサスペンス&ミステリー。なるほど戦時下陸軍絡みで、こうゆう切り口もあったのかと感心した。
Tampa Red etc.『THE SLIDE GUITER』
 MLBア・リーグで岩村のレイズが優勝し話題となっているので、そこでレイズの本拠地フロリダ州タンパにちなんでタンパ・レッド。タンパ・レッドは'20年代後期から30年代に活躍したブルース・マンでスライド・ギターの名手。なんせギター・ウィザードだからね。洒落たスタイルの歌い口と演奏で戦前屈指の人気ブルース・マンだった。単独盤を聴こうと思ったけど気が変わってこのスライド・ギターのオムニバス盤にしました。ブラインド・ウィーリー・ジョンソンやチャーリー・パットン、ブッカ・ホワイト、ロバート・ジョンソン、サン・ハウスなどが一度に楽しめちゃうからね。そういえば今朝のTVに浪速太郎(だっけ?くいだおれ人形)と共演した(笑)上田正樹&有山じゅんじが歌っていて、これがけっこうタンパ・レッドっぽくて楽しかった。


 10月21日 晴れ  体調・普通  アマゾン.com 自粛中!

 佐野眞一『阿片王』読了。多様な人物が複雑に交錯し、時に頭の中がグチャグチャになりながらまた眠気に抗しながら長いノンフィクションを読み終えた。疲れた〜。本書の大きな背景としては、先の日中戦争が " 二十世紀のアヘン戦争 " であり、満州がアヘンによってつくられた帝国だったこと、そしてこの日本の阿片政策は国家ぐるみの犯罪だったとある。その阿片密売の中心人物阿片王里見甫をめぐるノンフィクションで、まあ悪い奴等がぞろぞろ蠢いているわけだ。先の戦争のことを考えるに、国民を戦争に駆り立て国土を荒廃させ敗戦に至らせた戦時指導層の厚顔無恥な無責任ぶりと終戦後アメリカ傀儡として己の保身を図ったあの政治家・軍人・官僚連中への憎悪はつのるばかりだ。WEBのウィキペディアより「一億総懺悔」を引用しよう。〜『一億総懺悔論が東久邇宮首相の主要な政治理念とみなされた。ある意味では国家首脳部の戦争責任を曖昧にする論理と言える。すでに敗戦直前の時期に内務省情報局から各マスコミに対して「終戦後も、開戦及び戦争責任の追及などは全く不毛で非生産的であるので、許さない。」との通達がなされた。また、敗戦後、各省庁は、占領軍により戦争責任追及の証拠として押収されるのを防ぐため、積極的・組織的に関係書類の焼却・廃棄を行っている。』〜 指導者としての戦争責任を一億総懺悔で回避し国民への謝罪もなしにのうのうと戦後社会に君臨した政治家・官僚達。その無責任体質こそ戦後日本の諸悪の根元だと思うんだよ。ああ胸くそ悪いし疲れた〜。
HOMER & JETHRO『PLAYING STRAIGHT/
           IT AIN'T NECESSARILY SQUARE』
 本日はまったりとマンドリンとギターのデュオ、ホーマー&ジェスロの名人芸を楽しんでいます。読んでた本が重かったからなあ。ナッシュビル産スウィング・ミュージック、粋な音楽だよね〜。そのうえこのふたり組はコメディアンでもあり人気者だったわけで、大衆演芸的な楽しさがその演奏にも滲み出ているんですね。なごむなあ〜。


 10月19-20日 晴れ  体調・普通  アマゾン.com 自粛中!

 きのうは小学校の文化祭でした。娘は6年生、ああもう6年たったのか...と感慨深いものがありました。最後の小学校文化祭ということでPTA合唱の指揮者の依頼が来てしまい、ここで逃げるのはいつも頑張っている娘に対して恥ずかしいという気持ちとちょっとした好奇心で引き受けたのでした。曲はドラえもんのテーマ・ソングだという「YUME日和」と大人気でお馴染みの「崖の上のポニョ」。初めて曲を聴かせてもらい、そこでよせばいいのにバンド・マン魂にチロチロと火がついて、「YUME日和」のイントロと間奏にマンドリンはどうですか?俺が弾きますが...。「ポニョ」の間奏のところはカズーでやってみませんか?俺が吹きますが...。との提案が通ってしまい、PTA合唱始まって以来初のマンドリンを弾く指揮者、カズーも吹く指揮者が誕生しお披露目をしたわけです。おかげで、指揮への集中力を欠くという指揮者にあるまじきポカを数回重ねてしまいましたが、コーラスの皆さんはそんなのどこ吹く風で(笑)何事もなく歌い終えました。初めての経験で緊張もしたけど、とても楽しかった。バンド・マンなんかより指揮者の方が気持ちいいかも...などと思ってしまった1日でした。
「YUME日和」「憧れのラジオ・ガール」
 俺は「シンバル」という言葉が好きなんだということに気づいた。明るい希望の響きやトキメキって感じをシンバルから連想するからかな。PTA合唱の初練習で「YUME日和」を初めて聴かせてもらいそして歌ってみたその時、♪〜金のシンバル鳴らすように ささやくのはおひさま〜 の歌い出しにコロリとやられてしまい、ああ良い曲だなあと気持ちが一気にノッてしまった。そうか、金のシンバルはささやくように響くのか〜なんて素敵な朝の光景なんだ...とじつに単純な俺でした。シンバルシンバル...なんかあったな?シンバルの出てくる好きな歌がと思って口ずさんだのが南佳孝の「憧れのラジオ・ガール」。♪〜 Radio Girl やさしい声で Radio Girl ささやいて 胸のシンバル鳴らしながら 手に入れたい君なのさ〜 と、歌われるんですね。胸のシンバル鳴らしながら...この気持ちはとてもよくわかるし、素敵な表現だと感心してしまいます。ということでシンバル・ソングを2曲です。


 10月17日 晴れ  体調・普通  アマゾン.com 自粛中!

 我慢できずに続けて北方謙三『楊令伝 五』も読了。燕雲十六州の戦いも収束に向かい、江南の方臘に対する重苦しい戦いは童貫が制す。その間新たな梁山泊は新しい国造りに乗り出す。息もつかせぬ展開にページをめくる手が止まらない(笑)。男達のオアシス、合戦の合間の息抜きシーン、本巻登場は妓楼に繰り出した史進と花飛麟。花飛麟の初々しい絶倫ぶりに唖然な好色史進が可笑しい。また『水滸伝』登場人物達が自分の老いに向き合い始めたようですね。童貫しかり呼延灼しかり。そして新手の若武者も次々と登場。さあてこの『楊令伝』、どこまで駆け続けるのか、お楽しみはまだまだ続くね。
LENINE E SUZANO『OLHO DE PEIXE』
 レニーニ&スザーノ'93年盤『魚眼』のつづき。YouTubeでマルコス・スザーノのパンデイロ技を見ながら、パンデイロを手に入れて修得し華麗にサンバのステップを踏みながらパンデイロ技を繰り出す俺を夢想した(笑)。レニーニという人はソングライターとしての評価も高く「黄金のペン」と仲間内から称されているそうだ。けど、ずっと聴いてると芯のようなものが感じられず、昔の例えばカルトーラの枯れた味わいとか、エゼリッチ・カルドーゾ(+ジャコー・ド・バンドリン)の深い歌心とか、クールで洒落たジョアン・ジルベルトとか、そんなブラジルの唄が聴きたくなった。


 10月15日 曇り/雨/晴れ  体調・普通  アマゾン.com 自粛中!

 北方謙三『楊令伝 四』読了。江南ではついに方臘と童貫が激突。そこでビックリ行天、童貫の連環馬。方臘の信徒70万、盾となる人民の海に対し連環馬200隊1万頭の馬がローラーをかけるが如く制圧して行く。この空前のスケールは中国ならでは。あの北京五輪の開会式を見た後だから、このスケールの大きさもアリかなと思えてしまう。ただし大スペクタクルだけでなく、亡くなった王母を偲び史進、楊令、馬麟、鮑旭、張平、花飛麟が集う場面は静かな時間の流れが物語に情感を加えていて印象に残った。
LENINE E SUZANO『OLHO DE PEIXE』
 レニーニ&スザーノ'93年盤『魚眼』です。マルコス・スザーノのソロを聴いていたら、やはりこちらレニーニ&スザーノ・コンビの方が聴きたくなった。ほとんどの曲がレニーニの唄とギターにスザーノのパンデイロというふたり演奏。「世界最小のコストパフォーマンス」と自ら称する。たったふたりなのにこの豊かな音空間はどうだ!まったく素晴らしい。流麗なメロディーとリズムと美しいハーモニー。耳に優しいのに、じゃあこれを真似るとしたら凄く難しいってことに気づく。でもブラジルの音楽家はフツーにこんなことをやってのける。ショーロの昔からブラジルの音楽はアメリカのジャズなどのポピュラー音楽よりはるかに洗練された音楽をやっていた。そんな豊かな音楽の土壌に上で自由に伸び伸びと音楽を奏でるレニーニ&スザーノ。ああ時間がない。つづく


 10月14日 晴れ  体調・普通  アマゾン.com 自粛中!

 佐藤多佳子『夏から夏へ』読了。ジャスト体育の日(笑)。先の北京五輪で俺が一番感動したのが男子4×100mリレー日本チームの銅メダルだったから、あの日本リレー・チームのノンフィクション本でしかも作者が『一瞬の風になれ』の佐藤多佳子ならこれは読まねばならぬ本だった。「...とぶように走るという表現があるが、スプリンターは、空を飛ぶのではなく、地を跳ぶのだ。彼等は大地に属した種族なのだ。」一走塚原直貴、二走末續慎吾、三走高平慎士、アンカー朝原宣治、そしてリザーブ小島茂之。このリレー・チームを2007年8月の世界陸上大阪大会から取材を始め、メンバーへの丹念なインタビューにより各人の性格や良好なチームワークの秘密、そしてスプリンターという生き方まで浮かび上がらせる。佐藤さんのミーハー度ゆえかどこかほのぼの温かくまた清々しいノンフィクションとなっていて読みやすい。北京五輪でのラスト・ランを有終の美で飾った36歳朝原に大きな拍手を贈りたい。
MARCOS SUZANO『SAMBATOWN』
 マルコス・スザーノ『サンバタウン』です。驚異のパンデイロ奏者スザーノの'96年アルバム。1曲だけ盟友レニーニが共演、素晴らしいスピード感とノリでブラジル音楽の今(でもないか?)を聴かせます。パンデイロってのは皮の張ってあるタンバリンなんだけど、これが名人の手に掛かるとひとりドラムスに聴こえちゃうくらい凄い。俺も欲しい!練習して上手くなりたい!ちゃってね(笑)。つづく


 10月12-13日 晴れ  体調・普通  アマゾン.com 自粛中!

 近所の93歳のおばあちゃんが亡くなり、昨日が葬式で受付やら弔電披露やらの仕事で忙しかった。その亡くなったおばあちゃんの元気な頃の笑顔が写った写真などを展示した、この卯之木集落の写真展『写真でつづる卯之木の昭和展』が卯之木公民館で開催されているので家族で見てきた。我が家からも10点くらいの写真と手巻き蓄音機にSP盤を出展しました。俺のように生まれも育ちもこのムラという人達にとってはとても懐かしい家並みや風景や人々の面影に出会えたことでしょう。
へぼ詩人の蜂蜜酒『リライアブル フィクション』
 オフノート・レーベルより'94年にリリースされた音盤。リーダー木村真哉に馴染みはなかったけど大熊亘、向島ゆり子、坂本弘道、服部夏樹がメンバーだし、ゲストに関島岳郎の名もあるのでなにやら面白そうと聴いてみました。一見オーガニックながらアバンギャルドを隠し味にした大衆芸能インスト音楽かも?といったオフノートから連想される音を期待していたら... 、ポップでストレートなロックでスタート、メイン木村真哉の歌を聴かせるロックなんですね。でもこの連中だから、ポップ・ロックと言ってもスンナリしたものではありません。とは言え、ずっとビートルズを聴いていたせいか、同じ土俵で音楽やってるこのアルバムは全ての面で物足りないと感じてしまう。


 10月9-10日 晴れ  体調・普通  アマゾン.com 自粛中!

 山本文緒『アカペラ』読了。なんとも愛おしい物語、これは貴重です。ささやかな幸せだけど、かけがえのない幸せ。「アカペラ」のタマコはじいちゃんとふたりで暮らす健気な中学生。「ソリチュード」の春一は高校生の時に従姉妹の彼女との恋を引き裂かれ、ぷっつり家出し20年ぶりに帰郷したダメ男。「ネロリ」の志保子は病弱な弟とふたりで暮らす50歳独身。最終章のラストの言葉がツンと胸を突きそして温かな気持ちになる。「人生がきらきらしないように、明日に期待しないように生きている彼らに、いつか、なくてはならない期待の星になるために、心を温める名前のあたしが。」とココア(心温)ちゃんは健気に明日へ踏み出すのだ。待ちに待った山本文緒珠玉の名作です。小泉今日子もTVで推薦してました!ぱちぱちぱち...
THE BEATLES『PAST MASTERS vol.1〜vol.2』
 「ちょっと前にはみんなが聴いてるから俺はビートルズは聴かないっていう人がいましたよね、でも、これは聴かないとバカだっていうのがみんなわかったと思うんです。」このレココレ誌上における杉真理発言に対し、" みんなが聴いてるから聴かなかった " 派の俺としては、そしてCD購入資金が乏しい俺としては、まあ良い機会だからビートルズに浸かるのもいいかなと思い、じっさいビートルズを聴くのは楽しかった。この『PAST MASTERS vol.1-2』はシングル・ヴァージョンやなんとドイツ語ヴァージョンなどが収録されています。'62年から'69年までのベスト盤とはちょっと違った彼等の歩みが楽しめました。
 ずう〜っとビートルズを聴いて来て何を思ったかといえば、彼等のやんちゃな向上心が世界中にロックという文化を根付かせたのだと思い至ったのでした。ぱちぱちぱち...


 10月7-8日 曇り/晴れ  体調・普通  アマゾン.com 自粛中!

 西川美和『名作はいつもアイマイ』読了。西川さんは『ゆれる』で有名な映画監督で、見た目とてもチャーミングな女性です。舞台挨拶でしっかりと見ましたから。『ゆれる』は小説本にもなっていて、才能あふれる書き手としても注目しています。その西川さんによるブック・レヴュー本ですが、嬉しいことにレヴューされた小説まで載っています(長編は抜粋ですが)。その一遍一遍がとても面白くてお得感倍増です。例えば太宰治『メリークリスマス』、「...この子は、母の十八の時の子だというから、母は私と同じとしの三十八、とすると、.....今夜から私は、母を裏切って、この子の仲間になろう。たとい母から、いやな顔されたってかまわない。こいを、しちゃったんだから。」、まったく太宰ったら...三島由紀夫が嫌うのもわかる気がするなあ。「こいを、しちゃったんだから」(笑)。久しぶりに太宰を読みたくなった(笑)。
THE BEATLES『LET IT BE』
 『レット・イット・ビー』は'70年に同名映画公開とともにリリースされたと思う。あの4人が4分割された有名なジャケットとシングル「レット・イット・ビー」が毎日のようにマス・メディアを賑わせていたけど、皮肉にもすでにビートルズは解散していた。この年にマジにロックに目覚めた俺は、ビートルズとはすれ違いだったわけだ。このすれ違いが俺からビートルズを遠ざけたと思う。'70年頃、ロックは活況を呈していた。次々に新しいバンドが登場し新しいロックを聴かせてくれた。王様ビートルズを聴いている暇はなかった。この『レット・イット・ビー』だけど、シングル「レット・イット・ビー」「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」「ゲット・バック」とジャケット写真意外は印象の薄いアルバムだった。同じ年の録音だった『アビー・ロード』と比べて格段に落ちる出来だったと思う。おそらく4人がこのレコーデォングにノッていなかったんじゃないかな。レコーディングはGet Back・セッションと呼ばれた。'69年1月2日から始まり1月30日のあの有名なルーフ・トップ・コンサートで終焉を迎え、映画撮影も平行して行われた。しかしこのレコーディング・セッションはゲット・バックできない4人をさらけだし、その録音テープは棚上げされてしまった。そこで登場したのがかのフィル・スペクター。マスター・テープにはフィルの魔法がかけられ、すでにビートルズのいない'70年になって世に出たのがこの『レット・イット・ビー』。そんな背景を想いながら聴くせいか、「レット・イット・ビー」はいつもレクイエムに聴こえてしまう。


 10月5-6日 曇り/雨/曇り  体調・普通  アマゾン.com 自粛中!

 実りの秋。家の裏の田んぼもすっかり稲刈りが終わっていました。
The Beatles『ABBEY ROAD』
 ビートルズを年代順に聴いてきましたが、この『アビー・ロード』まで来ると一抹の寂しさを憶えます。'69年事実上のラスト・レコーディング・アルバムですからね。リリース順としては『レット・イット・ビー』がラスト・アルバムですが。アビー・ロードの信号を渡る4人で有名なジャケット。俺にとってアルバム単位で最初に聴いたのがこれだったから印象深いな。16トラック・レコーダーによる初録音でもあり、ステレオ定位や音の厚さなどサウンドも格段に素晴らしい。ジョンの超かっこいい「カム・トゥゲザー」で始まり、ジョージの名曲「サムシング」、ポールがわざとノドをつぶしシャウトする「オー・ダーリン」、リンゴの持ち味全開「オクトバス・ガーデン」、ぶ厚いギター・サウンドでヘヴィー・ブルース・ロックするジョンの「アイ・ウォント・ユー」、続いて爽やか軽快なギターのイントロに導かれて「ヒア・カムズ・ザ・サン」と歌うジョージの名曲、ジョンの「ビコーズ」におけるジョン、ポール、ジョージによる三部合唱の美しさ!、「ユー・ネヴァー・ギヴ・ミー・ア・マネー」から始まる珠玉の小品メドレーを聴き終わる頃にはフゥ〜とため息ひとつ。このアルバムにはその後のロックの全てがあった。


 10月3-4日 晴れ  体調・普通  アマゾン.com 自粛中!

 和田竜『忍びの国』読了。ひさしぶり胸のすくようなヒーロー物です。しかも忍者もの。舞台は信長の伊賀攻め。忍者といえば俺達昭和30年代に少年時代を送ったものにとってほんとにヒーローだったね。「サスケ」「ワタリ」「カムイ」「伊賀の影丸」あとTVの「隠密剣士」でも忍者が活躍。「忍者部隊月光」なんてのもあった(笑)。あの頃なんであんなにも忍者が流行ってたんだろうね。少年漫画雑誌の裏表紙には手裏剣など忍者の武器の玩具が通販されていたっけな。金のない少年(俺)は捨てられたブリキ板で手裏剣を作って遊んだものだった。そんなあの頃のワクワク感そのものを活劇化したのがこの『忍びの国』って気がする。火遁・水遁・土遁の術を駆使する忍者達。とにかく面白い。一匹狼の忍び無門のその後の物語が読みたいなあ、と作者に熱望。
The Beatles『Magical Mystery Tour』
 『イエロー・サブマリン』の前にこの『マジカル・ミステリー・ツアー』があったのを忘れておました。'67年TV映画のサントラとしてリリースされた本盤ですが、後半のシングル・ヒット集はアメリカ盤発売時のおまけだったそうです。「ハロー・グッドバイ」「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」「ペニー・レイン」「オール・ユー・ニード・イズ・ラヴ」といったシングル盤曲はやはり強力です。「フール・オン・ザ・ヒル」に代表されるようにポール絶好調のアルバムですが、ジョンも流石の「アイ・アム・ザ・ウォルラス」で存在感をアピール。この時期のビートルズはスタジオ技術も円熟期で非ロック的楽器もどんどん取り入れて作曲面サウンド面とも創造力ではピークを迎えていた気もします。また『サージェント・ペパーズ...』『マジカル・ミステリー..』『イエロー・サブマリン』と続く3作に見られるサイケデリックは時代の香りでしょうかね。サイケだけでなくこのアルバムで印象的なのが楽器の使い方で、特に「ペニー・レイン」で高らかに吹き放たれるバッハ・トランペット(Bフラット・ピッコロ・トランペット)はとても効果的。これはヨーロッパの香りですね。


 10月1-2日 晴れ  体調・普通  アマゾン.com 自粛中!

 宮部みゆき『おそろし 三島屋変調百物語事始』読了。今や江戸市井物も得意分野としている宮部さん、今回の江戸物も新趣向で楽しませてくれます。すこしひんやりとね。捕物帖とかなにか事件を解決するような物語は今までもあったけど、こんかい解決する出来事はちょっとやっかいです。あの世のお話しが絡みますから。心のヒダにじんわり沁み込む冷ややかさと温かさ、繊細な人間物語ですね。百物語事始ですから続編も期待できます。
The Beatles『Yellow Submarine』
 さてまたビートルズに戻ります。'68年の同名映画のサウンドトラック盤。有名曲「イエロー・サブマリン」と「オール・ユー・ニード・イズ・ラヴ」はすでに発表済みだったから映画から離れて聴くとちょっと存在感の薄いアルバム。それでもビートルズらしくないフィードバック・ギターが鳴り響くジョージの「イッツ・オール・トゥ・マッチ」、イントロがかっこいいジョンのロックン・ロール「ヘイ・ブルドッグ」など聴き所がないわけじゃない。ただ俺がこのアルバムの肝ともいうべき「オール・ユー・ニード・イズ・ラヴ」のような曲調を当時も今もあまり好きじゃないってことなんだよね。デビューの頃の溌剌としたロックン・ロールこそ俺のビートルズだから。


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