●2009●

 1月30-31日 曇り/雨  体調・普通  アマゾン.com 自粛中!

 今野敏『ビート』読了。警察小説、ヒグッちゃん(樋口顕)シリーズです。今野の警察モノはどれも面白かったけど、これは中でも一番良い。親子の関係を核に、体育会系と頭脳型、柔道とヒップホップという一見対照的な組み合わせ上手く配置した構成が見事。物語のラスト、ああ間に合ってくれ〜という焦燥感!ジリジリしたぜ!巧いなあまったく。作者もあとがきで、「書き上げたときには、今までにないほどの充実感を覚えた。....本人が言うのも変だが、力作だ。」との自信作。はい、しっかりと受け止めましたよ。
ラブジョイ『あの場所へ』
 待望の新作です('08年作だけど)。bikkeの素直な発声による歌声と童謡を思わせるシンプルな歌詞に魅力を感じています。歌唱と詞に余計なものがないので、より豊かなイメージの世界が広がります。これ魅力その1.控え目な演奏に血が騒ぎます。これはとても難しいことです。近藤達郎(kbds)、松永孝義(b)、服部夏樹(g)、植村昌弘(ds)という名うてのプレイヤー達の歌伴に徹したバンド・プレイがじつに凄いのです。これ魅力その2.紙ジャケと歌詞カードのデザインがとても素敵です。いぬんこの絵にyamasinさんのデザインです。これ魅力その3.bikkeはギター弾きでもありまして、その氷点下なギター・ソロが意表を衝いて登場します。これ魅力その4。余談ですがbikkeは渕上純子さんとJBという素晴らしいユニットもやっています。これが魅力その5.ということで魅力ずくめのラブジョイ『あの場所へ』でした。


 1月29日 晴れ  体調・普通  アマゾン.com 自粛中!

 三羽省吾『公園で逢いましょう。』読了。面白かった。団地の公園に集うママさん達のそれぞれを描いた連作集。グループ最年少の通称羅々ママは双子の母親。グループの会話から少しはなれたジャングルジムの上で携帯メールに夢中...まったくなんて母親だろ、と周りからは見られがち。でもね、最終章で彼女羅々ママは語るのだ。彼女は悲しい子供時代を送った。十代でシングル・マザーになった。もちろん育児のことなどなにもわからない。公園に来てママさんグループの近くにいると、育児のあれやこれやが耳にはいってくる。彼女はそっと聞き耳を立てている。覚えることが多いから携帯にメモしたり写メで撮ったり。覚えることが多すぎてジャングルジムの上でひとり復習している...。こんな羅々ママの健気さに切なくなりました。がんばれ世界中の羅々ママ!
ムーンライダーズ『LIVE at SHINJUKU LOFT 2006.4.15』DVD
 嬉しくて頬が弛みっぱなし。'06年のライヴ映像だけど曲は『ヌーベル・バーグ』('78)、『モダーン・ミュージック』('79)、『カメラ=万年筆』('80)の3作品からのもの。「彼女について知っている二、三の事柄」「Video Boy」「無防備都市」「いとこ同志」「バック・シート」「水の中のナイフ」「ドッグ・ソング」「スイマー」とんでとんで「太陽の下の18才」「インテリア」ときたもんだ! デビュー時から世紀を跨いで現在までず〜っと日本一大好きなバンドなんだけど、思えばこのへんのアルバムに一番思い入れがある。あの'79年のライヴ、スターウォーズっぽいヘルメット被ってディーヴォのようなファッションでニュー・ウェイヴで突っ走ってたあのライヴに見惚れていた俺としては、その再演のようなこのライヴ、どうしてその場にいなかったんだと悔やむばかり。それでもこのDVDがあるから良しとしよう。ライダーズのような日本一のマイナー・バンドゆえに、この喜びを分かち合えるヤツが周りにいないのが残念だ。


 1月27-28日 雪/曇り/晴れ  体調・普通  アマゾン.com 自粛中!

 雪が降らないと楽なんだけど暇です。はははは(気弱な笑い)。
John Frusciante『The Empyrean』
 ジョン・フルシアンテ、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのギター弾き。ジミヘンとザッパが大好きだったギター少年が成熟して作ったソロ新作はギター野郎でありながらサウンド指向ばっちりな歌モノ・アルバムでありました。インスト・パートより歌が多かったのは予想外だったな。しかもティム・バックリーのカバー曲があったりで内省的な歌が多い。やはり面白いのはサウンド面かな。テクニカル方面よりも音像・音響面で凝りまくってる感じ。もうちょっと剛直な方が好きなんだけどね。


 1月26日 晴れ  体調・普通  アマゾン.com 自粛中!

 絲山秋子『イッツ・オンリー・トーク』読了。せっかくだからキング・クリムゾンの「エレファント・トーク」も聴いてきました。エイドリアン・ブリューがたしかに♪イッツ・オンリー・トーク〜と歌ってましたね。絲山の小説の男女関係って独特で「イッツ・オンリー・トーク」の中に " .... 私は安心した。安心して楽器になった。痴漢は楽器を奏でた。愛がないのに心がこもっていた。不思議だった。" とあります。愛し合ってはいないけどお互いが心地よい関係ってのが、絲山小説にはよく出てきますね。それともう1篇の「第七障害」には群馬の野反湖に行ったカップルが湖の一番奥を指さして " あそこにロッジがあるんだ、それで道は行き止まり...その向こうは?...新潟。山越えても何もねえけど " と。何もねえとは失礼な。野反湖の先は奥志賀林道通って秋山郷でわが津南町なのである!まあすっげえ山奥だけどね。
NEIL YOUNG『SUGAR MOUNTAIN
        LIVE AT CANTERBURY HOUSE 1968』
 ニール・ヤングの眼ヂカラ!このジャケット写真のニール・ヤングの眼、引き込まれるなあ。眼光鋭いってこうゆう人なんだね。甘い声で優しく歌われても、きっとなにかウラがあるんだ(笑)、と思わせるような鋭さ。このライヴ盤ではお喋りもたくさん聴けるんだけど、喋る時は低いトーンなんですね、あっでも興に乗ってくると高いトーンになるんだ(発見)。すっかりお馴染み「オン・ザ・ウェイ・ホーム」のギターのイントロだけど、時代を超えてかっこいいしセンス良いよね。後年のフュージョンを思わせるもんね。ギター弾き語りなんだけど感覚的にすでにフォークじゃない。全曲語りかけるように歌うんだけど、これは時代の空気なのかな?でもこの時期だってエレキを持てば鬼神のごとくだったわけだから、ライヴによってスタイルの切り替えができるし、そのどちらも人気があったニールさんでしたね。しかも未だに現役として高い人気を誇っているのだから、ファンとしてありがたいやら嬉しいやらで...散財が続きます(笑)。


 1月24-25日 曇り/晴れ  体調・普通  アマゾン.com 自粛中!

 田中優子『カムイ伝講義』読了。江戸学のエース田中優子が白土三平の『カムイ伝』を入り口に江戸時代の暮らしを講義したものです。『江戸の想像力』『江戸の音』で親しんでいた彼女があのカムイ伝を語るのか!?と興味津々でしたが、本書はカムイ伝を語る本ではなく、カムイ伝をベースに江戸時代の暮らしを語ったものです。白土三平の漫画は大好きでしたが、その中で『カムイ伝』は敷居の高い作品でした。漫画ではなく劇画であり、背伸びして読んだ『カムイ伝』により「非人」という民を知り、そこから階級制度を知ったのは確かなことで、そのことが後に網野善彦による中世漂泊民の世界へと導くきっかけとなったと思っています。学校で学ぶものの多くは権力者の歴史です。室町時代とか江戸時代とか、その時代の名は権力者とその中心地により区分されています。日本史の登場人物の多くは天皇、貴族、武士、僧侶といった権力者です。そんな日本史で本当の日本の姿が見えているとは思えません。本書に幕末日本の人口構成比が記されています。武士6〜7%、農民80〜85%、工商を営む町人5〜6%、神官・僧侶1.5%、穢多・非人1.6%と推定されるそうです。私達が江戸時代を思い浮かべる時、先ず江戸の町でありそこに暮らす武士と町人です。人口の8割りを占める農民の姿は見えていません。また穢多・非人に至っては歴史から抹殺されてきたと思われます。日本を知る、その文化を知り、日本に誇りを持つということは、正しく日本の歴史を学ぶということです。いったい何割の日本人が「日本」がいつから「日本」となったのかを認識しているのでしょうか?
 田中優子『カムイ伝講義』には今まで知られることのなかった日本人の生活が語られています。先ずは必読ということで。
NEIL YOUNG『SUGAR MOUNTAIN
        LIVE AT CANTERBURY HOUSE 1968』
 ニール・ヤングの'68年はバッファロー・スプリングフィールド解散から初ソロ・アルバム制作、そしてこの11月のソロ・コンサートがあり、翌'69年にはクレイジー・ホースをバックにセカンド・アルバムをリリース、年末にはクルスビー・スティルス&ナッシュと合流しスーパー・グループCSN&Yが誕生、と目まぐるしいというかそれより充実しきった活動をしていた時期だったようです。そしてそれ以降も充実しっぱなしのニール・ヤングなのですが。ともあれ'68年ニール・ヤングのソロ・ライヴなのです、血が騒がないわけがない!つづく


 1月22-23日 晴れ/曇り  体調・普通  アマゾン.com 自粛中!

 「イエス・ウィ・キャン ! 」の声がこだまし星条旗が振られるそこは200万人を越える人民の海。すべての人々はひとりの男のために集まった。バラク・オバマが米国史上初の黒人大統領となる就任式を祝うために。TVの画面からもそのもの凄い高揚感が伝わってくる。アメリカの黒人音楽が大好きだったから、キング牧師やマルコムXやストークリー・カーマイケルなどの本も読んだりしたし、アフロ・アメリカンのそして人種差別の歴史などに興味は持っていた。21世紀のアメリカに黒人の大統領が生まれた。200万人を前に就任演説をするバラク・オバマは背筋がぞくっとするほどかっこよかった。
日野美歌『横浜フォール・イン・ラブ』
 「氷雨」の日野美歌として知っていた歌手が何故かミュージック・マガジン誌に載っていた。横浜にちなんだ歌のアルバムをリリースしたとあった。ジャズ・テイストだともある。横浜でジャズで実力派歌手って組み合わせに新鮮味はないなと思った。「港の見える丘」「蘇州夜曲」「別れのブルース」など大定番曲だし、「横浜ホンキートンク・ブルース」だって大人で上手い歌手でジャズ・テイストなら取り上げるだろうな、と思いそれほど惹かれはしなかったのだが、鎌倉出身の彼女が青春時代にキュンとした「海を見ていた午後」と「秋の気配」を歌っている知って俄然聴きたくなった。荒井由実の声じゃない、小田和正の声から離れたそれら名曲を聴いてみたかったから。しっかりとした歌唱力で歌われる、しっとりとした大人の歌として「海を..」も「秋の気配」もとても素敵だった。さらにトロンボーンの多重録音だけをバックに歌う「港の見える丘」のくすみ加減が絶妙だし、アワヤ先生の元から離れた「別れのブルース」はさらに名曲となった。


 1月19-20日 雨/曇り  体調・普通  アマゾン.com 自粛中!

 柴田錬三郎『眠狂四郎虚無日誌 上巻』『眠狂四郎虚無日誌 下巻』読了。シバレンの眠狂四郎シリーズは横溝正史の金田一耕助シリーズと共に二十歳前後に貪り読んだ懐かしい時代小説だ。先日懐かしさから再読した横溝の『本陣殺人事件』にはちょっとがっかりだったけど、シバレンの眠狂四郎はもう面白すぎて、このまま一年中読んでいたいくらいだ。本作は近藤(エトロフ)重蔵を絡ませ、エトロフ島の奥地の館に葵の御紋が!?なんと将軍の御落胤が!?といった物語が冒険活劇風なところが新鮮だ。それと今頃気づいたんだけど、眠狂四郎モノってのはハードボイルドだったのだ。北方水滸伝の源流に位置する和製ハードボイルドだ。簡潔な文体とキレのいいセリフ。登場人物ひとりひとりの造形の良さ。そして主人公は深い孤独ゆえの虚無に生きている。そのうえ毎回美女とのあれやこれや...。シバレンさんありがとう。まさしく昭和の宝です。
大友良英+山本精一『ギター・デュオ』
 ギター・デュオといってもゴンチチやデパペペのファンは泡吹いて卒倒するから聴かないほうがよろしい(笑)。この大友良英と山本精一というおふたり、相変わらず捉えがたい。ナニをするかわからない。まったくスリリング。フィード・バック、ドローン、撃音、ノイズ、音響系?ギター・ミュージックの極北....。古びたアパートの前に立つ大友と山本を見てようやく気がついた。彼等は人間そっくりな妖怪、ギター妖怪だったのだ(笑)。


 1月17-18日 曇り/晴れ  体調・普通  アマゾン.com 自粛中!

 スキーの競技会が盛んなこの時期、毎朝の新聞は先ずスポーツ欄の記事に目が行く。雪国津南ではその地域柄、子供の頃からノルディックやアルペンなどのスキーに親しむ。そんな津南の子供達が中学、高校、大学、社会人とスキーで活躍しているのを新聞で見つけるのが冬の楽しみのひとつだ。ただ今冬から津南高校の名前が見られなくなったのが寂しい。閉校となり栄えあるスキー部の歴史に幕を閉じたからだ。そして津南高校は中高一貫の津南中等高に生まれ変わった。娘は春から津南中等高で学ぶ。
RY COODER『THE BORDER/ALAMO BAY . OST』
 ライ・クーダーがジム・ディッキンソン、ジム・ケルトナー、ヴァン・ダイク・パークス、ティム・ドラモンド、フラーコ・ヒメネスといった盟友達と作り出す音楽は、俺にとって最高のものだ。それが映画のサウンド・トラックでも同じこと。『ザ・ボーダー』は'81年、『アラモ・ベイ』は'85年の作品。ライ・クーダーの'80〜'90年代は映画音楽の時代で、映画の世界でも自分の個性を損なうことなく、まさにライ・クーダー・ミュージックを提供している。スライド・ギターなどギター・サウンドの絶品プレイやルーツに根ざした深く豊かな音楽の味わいが、映像作家から求められたとも言える。インストゥルメンタルだけでなく歌モノにも印象的な曲が多く、中でもジョン・ハイアット歌う「トゥ・レイト」とロス・ロボスのデヴィッド・ヒダルゴとセザール・ロハスがスペイン語でデュエットする「クアトロ・ピシオス」そして格別なのがフレディー・フェンダーが思い切りメランコリックに歌う「アクロス・ザ・ボーダーライン」。素晴らしい!


 1月15-16日 雪/曇り/晴れ  体調・普通  アマゾン.com 自粛中!

 山の向こうが賑やかだなあ。はしゃいでいるなあ南魚六日町。なにやら「愛」の旗が林立しているとか。それにしてもまさか直江兼続がNHK大河ドラマの主役に躍り出るとは思わなかったなあ。地味でしょ戦国武将にしては。これまで直江兼続を知ってるなんて戦国マニアの世界だったのに。まあ俺は藤沢周平の『密謀』と童門冬二『北の王国』によって直江ファンになっていたから今回の騒動はまあ嬉しいかな。信長、秀吉、家康など覇者としての華々しさの影で見落とされていた、目ウロコものの戦国武将の姿を見せてくれるものと期待していますよ。
ふちがみとふなと『フナトベーカリー』
 アトミックの凄いジャズを姿勢を正して聴いていたので疲れました。なのでフナトベーカリーでふちがみとふなとを買って食べてます。とても美味しいです。食べ始めて「だんだん日が長くなってきた」〜「フロシキ仮面」〜「此れから」のあたりのジワ〜と温かい味わいにウットリし、「泪の葵橋」マスタードのちょい刺激にポッとする。「あくび」では、あくびをしたせいでちいさく傷つく少年に同情したけど「お父さんといっしょ」で明るい明日が待っていることを知った。お店の歌「ふなとベーカリー」では、お店のふたりは出張販売に忙しくて(もちろんパンが美味しいからだ!)留守がちなのだと知ったし、その近所の「池田さん」はバーのママらしいよ。「シロクマ大迷惑」には、そうそうシロクマは猛獣ですよと教えたくなり、「七夕にて」で夜空を見上げるたくさんの人を思い、「風の名前」はハードボイルドに背伸びして、「その夕暮れ」女性がふたり肩を並べて風をみていたし、ジャック・ブレルな「行かないで」はすっかり大人気分。で、ジャック・プレヴェールのような「!」では、知らないうちに大人になっていて大変です〜。ガラス越しにとどいた陽のひかりにあたためられた部屋の中の伸びゆく野菜をほめてあげる「ヒーのワルツ」に、お前達はえらいねとわたしもほめてあげたし。
 振り出しに戻って、♪あなたの笑う顔に 私は嬉しくなる あなたの話す声に 私は楽しくなる〜 と「レンズ」は歌うよ〜。
 十八年焼いてます。出前できます。フナトベーカリーです。どうぞ御贔屓に!


 1月14日 晴れ  体調・普通  アマゾン.com 自粛中!

 横溝正史『本陣殺人事件』20数年ぶりの再読。懐かしいというより、あれっこんなにも本格推理小説だったの?と戸惑いながら読んだ。あの杉本一文表紙絵イラストによる角川文庫の横溝シリーズはほとんど全部読んだはず、なのに違和感があったのは、その後の映画化やTVドラマ化により形作られたおどろおどろしい演出により、金田一耕助モノのイメージが定着しちゃったせいか思う。本格推理小説にとって大事なのは論理とトリックなんだよね。アクションとか男のイキザマとかはどうでもいいわけで(笑)。だから横溝を読んでると、作者も金田一探偵もトリックの種明かしに夢中になっていて、死人は置き去りな感じ、死人の数なんてモンダイじゃない(笑)。そしてここが重要なんだけど、この推理は読者参加型だったんだ。だから必要なタネは全て出して置く、そうしないと後で読者よりお叱りを受ける(笑)。まあそんなことだったわけだ。俺はハードボイルドへ路線変更していたので、こんな推理小説の流儀は忘れていた。この『本陣...』が面白かったら、さらに金田一モノを再読しようと思っていたけど、この1冊だけでいいな。
Atomic『Retrograde』
 アトミックのメンバーはフロントの二人マグヌス・ブルー(tp)、フレデリク・ユングヴィスト(sax,cl)がスウェーデン出身、あとの3人ホーヴァル・ヴィーク(p)、インゲブリクト・ホーケル・フラーテン(b)、ポール・ニールセン・ラヴ(ds,perc)がノルウェー出身。そんな彼等とシカゴとの関わりがライナーに書かれていて興味深い(前作は輸入盤だったので...)。アート・アンサンブル・オブ・シカゴなどを輩出したシカゴAACMとの関わりは同じジャズとして当然という感じだが、ジム・オルークやトータスなど所謂シカゴ音響派との交流はびっくりだし、それより本盤のミックス・マスタリングを手掛けているボブ・ウェストンがあのスティーヴ・アルビニの仲間だというのが面白い。アルヴィニといえばグランジ〜ハードコア・パンクといったオルタナ畑の人というイメージが強いしボブは彼の弟子にあたるわけだ。ボブの起用についてライナーによると「原音主義者」という言葉が出てくる。アルビニ〜ボブによるサウンドメイクが生音の良さを生かした音作りにあり、安易にエフェクトやプラグインを使わない姿勢がアトミック側からのオファーに繋がったようだ。こうしたエンジニアの起用が功を奏して出来上がったサウンドは生々しい迫力に溢れている。動と静の展開も見事で10分を超えるような曲も飽きずに楽しめる。3枚目ライヴ盤1曲目のドルフィーっぽさにニヤリ。いい連中だなあ。


 1月11-13日 雪/晴れ/雪  体調・普通  アマゾン.com 自粛中!

 11日夜に鳥追い12日にどうろく神焼きと本来の小正月行事を休日祝日にスライドさせて行いました。鳥追いは子供会行事なのでPTA地区長としては忙しいながら、子供達と一緒に鳥追い歌を歌いながらムラを回るのは楽しいものです。
Atomic『Retrograde』
 北欧のジャズ・ユニット'08年作品は'07年スタジオ録音盤2枚+'08年ライヴ盤という3枚組。前作『ハッピー・ニュー・イアーズ!』がもの凄く充実していた期待のグループ、さて新作はと耳を澄ますと、ああやはりこの人達は凄い!かつてエリック・ドルフィーが挑んでいたようなバップとフリーの綱渡り、その完成型を目指しているように思える。ジャズの惰性に溺れることなく、志の高さを感じる。とここまでにして除雪作業でひと汗かいてきます。つづく


 1月10日 雨/みぞれ  体調・普通  アマゾン.com 自粛中!

 天童荒太『悼む人』読了。『永遠の仔』以来久しぶりに読む天童作品はやはり凄かった。愛と死と生の物語。「悼む人」静人は事故や事件で亡くなった人を放浪しながらその現場に赴いて悼む人である。死者に対して、あなたのことを忘れずに覚えておきます、と悼む人。静人の物語は静かで死に満ちているが、静人を中心に末期癌を患う母、エログロ記者蒔野、夫殺しの倖世、この三人それぞれの物語が優しく激しく交錯し、陰影に富んだ物語として読み手を惹きつける。カバーには舟越桂の彫刻。彫刻の表情が「悼む人」のイメージに結びついてしまうのだが、これは物語にとって良いことなのか...。さてそして、直木賞は『悼む人』に微笑むか?
鈴木祥子『Sweet Serenity』
 甘い静けさとチョコレート・ミルクティ...が邦題。MM誌村尾泰郎の評に「たとえば仕事の帰り道、タメ息まじりに口ずさんでいるうちに、なんだか元気になってくるような歌...」とありまして、そうそう30-40代女性限定でね、とか思いました。そんなことからも鈴木祥子ますますの御発展を祈念いたします(笑)。ライブに行ったのは2年前になるのかな、気さくだけど実力者っていうパワーを感じましたよ。真っ赤なジャガーでロックする彼女を見てみたい、と今年の抱負。


 1月8-9日 晴れ/曇り/雨  体調・普通  アマゾン.com 自粛中!

 毎朝6時に起きる。外はまだ暗い。朝は朝日と共に起きたいものだ。春よ来い。
鈴木祥子『Sweet Serenity』
 昨年デビュー20周年の鈴木祥子、40代最初のアルバムは前作に引き続き充実の一作です。赤いフェンダー・ジャガーを抱えたアイドル・チックなジャケットから想像できたロリ・ポップな「ELECTRIC FINGERZ」が先ずはあっぱれ(笑)。リード・ギターは山本精一。このアルバム、ニール・ヤング大好きな鈴木さんによる" 孤独の旅路" なんだなって思う。孤独をネガティブに捉えないでね。いつも何か(愛がほとんど)を求めてる、欲しがってる、でも妥協なんかぜったいしない、これがワタシなんだから、と。男からみると、おもたい女スレスレな感じが、50男の俺からすればスリリングだったりもする。このスリリングな歌詞と甘ったるい歌声は才女のカモフラージュかもしれないよ。シンガー&ソングライターであり、ピアノ、オルガン、ギターにドラムまでもこなす才女。松永孝義のベースと告井延隆のペダル・スティールをバックに歌うカントリー・ワルツな「ローズピンクのチーク」でルーツ・ロックなノリを加味しているのは彼女のドラムとピアノ。「本当は哀しい関係」♪自発的に欲情なんてしない〜 って歌詞にドキッとするだけでなく、サウンドに耳を向けると武川雅寛の素晴らしいヴァイオリン・ソロとともに彼女の弾くピアノ、ハモンド・オルガン、ハープシコード、ウーリッツァーそしてドラムがじつに効果的。つづく


 1月6-7日 曇り/晴れ  体調・普通  アマゾン.com 自粛中!

 朝は七草粥ならぬ七草みそ汁。新年も7日だね。元日休んで2日から店を開け4日から棚卸しが毎年のパターン。間に源泉年末調整と申告の書類作成をやりながら。そして小正月がきてあっというまに2月がくる。今のところ積雪50センチと小雪で少し楽をしているけど、まだまだ雪はこれからが本番だからね。
RY COODER『THE RY COODER ANTHOLOGY
            THE UFO HAS LANDED』
 暗闇を振るわせ切り裂く、深くうねり太く響くスライド・ギター。ライ・クーダーのスライド・ギターが多くの人の耳に届いたのは音盤ではなくスクリーンだったと思う。『パリ、テキサス』『アラモ・ベイ』『クロスロード』『ジョニー・ハンサム』など'80年代映画のサウンド・トラックで鳴り響いたスライド・ギター。'70年代にあれだけ数多くの名盤を発表したライだけど、玄人筋の賞賛にもかかわらず商業的成功とは程遠く、電話代も払えぬ生活に落ち込んだらしい。そんな彼に光明を与えたのは映画界。映画音楽の仕事が生活を支えたという。『パリ、テキサス』の耳に残る " スライド効果 " は影響力が大きく、その後TVドラマやCMでも使われるようになった。生活が安定したおかげか21世紀に入ってライの音楽活動はますます充実、ソロ・アルバムの『チャベス・ラヴィーン』『マイ・ネーム・イズ・バディー』『アイ・フラットヘッド』と続くカリフォルニア三部作の豊かな音楽性は、ギタリストとしてのみならずライ・クーダーの音楽家としての素晴らしさを再認識させたと思う。アメリカの古いポピュラー・ミュージックを漁っているとシンコペイテッド・ミュージックという言葉に出会う。ジャズ、ブギウギ、ラグタイムなどといった言葉が確立する以前に、よくハネるリズムのごきげんなダンス音楽などをシンコペイテッド・ミュージックと呼んでいたようだ。ライ・クーダーの音楽はギターだけでなく、独特なハネるリズムも魅力のひとつで、まさに伝統に根ざしたロック世代のシンコペイテッド・ミュージックだと思っている。


 1月4-5日 雪/曇り  体調・普通  アマゾン.com 自粛中!

 山本幸久『ある日、アヒルバス』読了。新年1冊目は楽しい本を選びました。読む前から楽しさ加減がわかりました。だって山本幸久のお仕事小説ですから。今回のお仕事はハトバスがモデルのようなアヒルバスのバスガイドさん。入社5年目、おっちょこちょいなニワカ指導教官デコちゃん奮闘記。山本のお仕事小説が持つほんわか幸せ感には、イマイチ元気が出ない時などイチコロに癒されてしまいます。ま俺の場合だけど。
RY COODER『THE RY COODER ANTHOLOGY
            THE UFO HAS LANDED』
 Amazon で見かけてビックリのライ・クーダー・アンソロジー2枚組。輸入盤なので解説読む気にならずアンソロジーの意図がわからないですが、ブックレットの写真は楽しめます。'70年、路上で肩を組むライとヴァン・ダイク・パークスの写真は、俺のいかした兄貴達の写真として壁に止めておきたいな。disc1の1-2曲目が『Get Rhythm』からというのには意表を衝かれた。ダーティーなエレキ・スライドを多用していた時期で、映画のサウンドトラック仕事を多くこなしていた時期だよね。映画『ジョニー・ハンサム』の1曲はこうした感じのワイルド・サウンドですね。ボトムもヘヴィーで、この頃のを熱心に聴かなかったからちょっと新鮮です。つづく


 1月3日 雪  体調・普通  アマゾン.com 自粛中!

THE KINKS...アはアドレナリンのア、アはアルコールのア
 先ずは「ユー・リアリー・ガット・ミー」だ。やり場のない怒りがドス黒くトグロを巻いていたのは、夕方にやたら重い水を含んだ雪をせっせとスノーダンプで除雪していた時だ。昨日の夕方もそうだった。31日まで仕事をして、元日ちょっと休んで、2-3日ともう仕事。それだけでウンザリなのに夕方の除雪で身体はグッタリで心はねじ曲がる。俺はなんでこんな所でこんな事をしているんだろ?頭の中で「ユー・リアリー・ガット・ミー」が鳴っている。ドス黒く噴出されたアドレナリンがビートを刻んでる。怒りをなんとか持ちこたえる。作業終えて汗だくで店に戻り、まだ閉店時間じゃないけどビールを飲んだ。そんなに客も来ないし。ビールを飲みながらキンクスの甘い曲を聴くことに決めていた。「セルロイド・ヒーローズ」。♪ Everybody's dreamer and everybody's a star 〜 レイ・デイヴィスの哀愁の歌声は時にビートルズもストーンズをも凌ぐ。甘酸っぱい感傷に浸ってみたい時にレイの歌う「セルロイド・ヒーローズ」は静かに沁みる。汗が引いてビールも空になる頃「アルコール」が流れてきた。場末のキャバレーの最前列で酔っぱらった俺に歌いかけるレイ・デイヴィス(笑)。♪ ああ悪魔のアルコール 悲しい記憶も思い出せない いったい誰に想像できただろう この俺が酒の虜になるなんて... シニカルな歌につき合わされたとたん気分を変えたくなって「マスウェル・ヒルビリー」。♪ ニューオーリンズもオクラホマもテネシーも見たことはないけど まだ見ぬブラック・ヒルを夢見てる.....


 1月1-2日 雪/曇り/雪  体調・普通  アマゾン.com 自粛中!

 歳のせいか涙もろいなあ。大晦日の紅白、日系ブラジル移民の老人達の微笑みに涙し、坂本冬美の歌のバックに映し出された北京五輪女子ソフトの優勝の瞬間にも涙がぽろり(笑)。若いのとベテランが交互に歌うような構成だったようで、キマグレン→いきものがかりと若者が続いた後に登場した前川清「東京砂漠」、前川清がオーティス・レディングに見えたよ。ソウルフルで素晴らしかった。逆にキマグレンのような頭の軽そうな若者歌を聴いてると、いいのか〜?そんなんでホントにいいのか〜?と心配になる、俺達の老後が...(笑)。笑ってる場合じゃないね。
ザ・フォーク・クルセダーズ『ゴールデン・ベスト』
 大晦日が岡林だったので懐かしのフォークとしてフォークルです。なんか青春歌謡のようで拍子抜け。教科書にも載る、PTA合唱でもお馴染み「あの素晴らしい愛をもう一度」な感じですからね。この盤はシングル盤中心の編集なのでポピュラーな感じの曲が多いのは仕方ないけど、昔から加藤和彦という人はメロディー・メーカーだったんですね。「悲しくてやりきれない」とか「青年は荒野をめざす」とか。あと実験精神ね。「帰って来たヨッパライ」(笑)などヘンな歌も多数ある。カレッジ・フォークの流れと育ちの良さを感じさせたのがフォークルだったんだなと再認識。高一の時に先輩達が歌っていたのは岡林やフォークルだったから、俺にとってフォークって先ず彼等だったんだよね。「手紙」「チューリップのアップリケ」「何のために」そして「戦争は知らない」。「戦争は..」は好きだったな。♪ 野に咲く花の 名前は知らない だけど 野に咲く花が好き 帽子にいっぱい摘みゆけば なぜか涙が 涙がでるの〜 うわ〜憶えてるよ。寺山修司の詞なんだよ。♪ 戦で死んだ 悲しい父さん 私はあなたの娘です 20年後のこの故郷で 明日お嫁に お嫁に行くの〜 ってみんなで歌ってたあの頃。60年代末でもまだ戦争の傷跡を心に残している人が多かったし、それにベトナム戦争が身近だったから、こんな反戦の願いを込めた歌がリアルに感じられてみんなに歌われたのかな。


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